第3章 Chandelier/リーチ兄弟
「なぁにヤッてたのぉ?小エビちゃん。」
フロイドの声は甘く耳にねっとりと絡みつくようだった。
「………………。」
驚きと恐怖で声を出そうにも出ない。出たとしても何と言い訳をすれば良いか検討もつかない。
二人が一歩ずつ近付いて来るのに合わせユウはベッド上で後退りした。逃げたくても部屋の入口は一つしかなく、部屋の広さから言っても逃げられる自信は無い。目だけ離せず、ただ後退りするしかない。
「ねぇってばぁ。」
背中が壁にぶつかる。フロイドがベッドに片足を乗せるとベッドが軋む音がする。
グリムは枕元で寝ていて、暫く起きそうにない。ジェイドはフロイドの後ろに立ち、口元を押さえ笑っていた。アズールに助けを求めようにも逃げ道はなく、呼んでも聞こえるか分からない。もし、聞こえていても味方になる可能性は低いだろう。
「ねぇ、聞いてんだけど。」
先程までの笑みと甘い声が一変し、表情も声も苛立っていた。恐怖でユウは壁に背を付け小さく縮こまることしか出来ない。
「フロイド。ユウさんが怖がっています。もう少し優しく扱わねば。ユウさんもお取り込み中にすみません。」
“お取り込み中”が先程のことだと分かり、恥ずかしくなる。
「…何の、用ですか。」
努めて冷静に聞こえる様に尋ねるも、声は掠れ吐息から漏れる声は色香を含んでいた。
「折角のお泊まりだし遊んであげようと思ってさぁ。」
フロイドはユウの頬を撫で、髪を手櫛で整える。火照った体にフロイドの指は冷たく、優しい手付きは忘れていた快感を呼び起こした。
「…んっ。」
思わず出た声と僅かに反応した体が嫌になる。
「アハッ。…さっき小エビちゃんがヤッてたやつの続きしよっか。」
頭を撫でていた手を引き寄せ、ユウの唇にフロイドの唇が重なる。抵抗するも、するりと舌を入れられ歯列をなぞり舌を絡ませる。少し強引で荒っぽいキスだが、嫌な感じはしない。かすかに甘いキャンディの香りと味がする。何度も角度を変え落とされる口付けにユウは熱に浮かされた様に頭はぼんやりとし、目は潤み虚ろになりながら応えた。体が疼いて仕方ない。
どちらのものか分からない唾液が溢れ出た頃、やっとフロイドの唇が離れた。
「…チューだけなのに気持ち良かったの?」