第3章 Chandelier/リーチ兄弟
それからは、他愛もない話をしつつ、普段よりも華やかな食事を楽しんだ。中には新学期からの新メニューとして考案されたドリンクやスイーツもあり、勧められるまま口に運んだ。食べているところをジッと見られるのは居心地が悪いものだが、本人達としてはモニターの反応を知る為の大切な機会なのだから仕方ないことだと自分を納得させる。
食事がすすんでくると、久々に履いたスカートで冷えていた体はポカポカと熱を持ち始めてくる。そして、時折双子から悪戯に触れられる体はその度に電流を走らせた様な快感を連れて来る。それは食事が進むに連れてゆっくりと強くなっていくようだった。何かがおかしいと気付いた時にはパーティも終わりに近付いていた。横を見ると、グリムは食べて満足したのか食べ物を口に運びながらウトウトとし始めていた。詰まらせないか心配しつつ、口周りに付いた残渣物を拭き取る。
「宴も酣ですが、そろそろ片付けを始めましょうか。」
アズールの一言に、ホッとする。片付けは、余分なことを考えないよう手早く済ませる。ジェイドに皮肉を言われたような気もするが無視する。そして、挨拶もそこそこにソファに丸まり寝ているグリムを抱え用意されて部屋へ帰って行った。
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「小エビちゃん、ビクンビクンしてて超ウケた〜。」
モストロ・ラウンジに残されたフロイドは声を上げ笑っていた。ジェイドも意味あり気に笑っている。アズールはソファに深く腰掛け、深くため息をつく。
「例のものを早く寄越しなさい。」
「はい、どうぞ。」
アズールが手を差し出すと、ジェイドは小さなチップをアズールに渡す。それは、アズールがオーバーブロットした時に撮られた動画だった。
「いつの間にこんなものを…全く…。」
このデータを見せられたのが、ホリデーに入ってすぐのことだった。まさか撮られているとは思わなかったので驚いた。そして、そのデータを渡す代わりに今日のことを打診された。恐らく、この二人のことだからこれで済むはずがない。ユウとグリムに食べさせた試作品に薬を仕込んでいるのは分かっていた。しかし、それを指摘するのは契約違反だし、ユウに知らせる義理もない。パーティだけなら取引なしでも構わなかったが、恐らくこれから起きることへの口止め料も含んでいることは容易に想像出来た。
「何をするのかは聞きませんが、程々にお願いしますよ。」