第2章 ◆化粧/ケイト
「ん〜…ないな。」
トレイの答えにホッと胸を撫でおろすと同時に悔しさが込み上げる。
「そりゃ残念。大物カップル誕生かと思ったのに。トホホ…。」
自分の思わぬ心情に戸惑いを覚えたが、無視した。
「何が大物カップルだよ。…さて、今日の日替わりは何かな。」
呆れたように言うトレイは嘘を付いたようには見えなかった。
「オレ今日はラーメンにしよっかな♪もうお腹ペコペコ。」
これ以上は怪しまれると思い、メニューを選ぶ。昼食はトレイの提案で先に来ていたリドルと合流し食べることにした。ユウはケイト達とは離れた席で食べているようだった。
昼食後は二人と別れ午後の授業へ向かう。マジカメチェックも怠らない。放課後は部活動にも勤しむ。特に変わりない日常である。変わったところと言えば、ユウの姿をいつもより多く見かけることぐらいである。
ー今日、行こっかな。
何度も姿を見たせいか、フツフツと欲求が湧き上がる。放課後は図書館に行くことが多いと言っていたことを思い出し、向かっていると教室から出てくるユウを見つける。
ーラッキー♪監督生ちゃん発見♪
チラリと通りがかり様にユウが出てきた教室内を覗くと見知らぬ男子生徒が一人いた。
ーあー。そういうこと。
男子生徒の表情から何が起きたか察するが、お構い無しで先を歩くユウに声をかける。驚き振り向くユウは最初警戒した様子だったが声をかけたのがケイトと分かると顔を綻ばせる。
「…ビックリした〜。こんにちは、ケイト先輩。」
「ごめんごめん。こんなとこにどうしたの?」
分かっているが、何と答えるか聞きたくなり尋ねてみる。
「あ〜…ちょっと、色々と野暮用です。先輩は?」
苦し紛れにはぐらかされたが、表情から教室で起きた出来事とその結末を確信する。
「オレはね、部活帰り。」
「軽音部でしたっけ?」
「そーそー。って言ってもお菓子食べながらお喋りするだけなんだけどね。」
「え〜!それ部活としてどうなんですか。」
驚き、笑う。屈託ない表情は気を許してくれている証拠だろう。先程の生徒に見せてやりたくなる。
「……監督生ちゃん、ちょっとお茶していかない?」
もう少し一緒に居たいという願望でお茶に誘うとユウは
「はい。」
と笑顔で返事をした。