第2章 ◆化粧/ケイト
「それならクローバー先輩とかはどうだ?よく二人で居るのを見かけるぞ。」
「あぁ…あり得る。つか、そうっしょ!あの人面倒見良いし、今度何か教えて貰うってアイツスッゲェ喜んでた。」
よく知った友人の名前が上がり、心臓が大きく脈打ち、ざわつく。想像でしかないが、二人が並ぶ姿は誰が見てもお似合いと言うだろう。作業的にスマホを触るが、画面に何が映っているか頭に入ってこない。
何となく監督生は自分のことが好きだろうと思っていた。直接聞いたことはないが、久々の逢瀬になった時はいつも以上に喜んでいたと思う。また、自分に向けられる目は熱っぽく、恥じらう姿や喜ばせようとする姿は扇情的で男心をくすぐった。あの姿は自分だけのものだと思っていたが、それは勘違いだったのか?
一人自室で考えるが、堂々巡りで答えはいつまでも出なかった。そして、思わずその姿を思い浮かべてしまいその身を慰めた。
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翌日、体力育成の授業が終わり、トレイと昼食のために食堂へ向かっていると、2階の廊下をユウと1年生が同じ様に食堂に向かっているのを見つけた。学園には様々な人種・種族が在籍している。また、髪の長さや体型も様々である。男子高校生の中に女子1人は浮くのではと思っていたが、見た限り上手く溶け込んでいる。
「ユウの適応力は見習うものがあるな。」
思わず口に出していたかと思ったが、違った。
「ね〜。……ってか、トレイ君監督生ちゃんのこと呼び捨て?!」
聞き逃しそうになったところを食い止める。
「ん?あぁ。本人に『お前』呼びは止めてほしいって言われてな。」
悪びれた様子も恥じる様子もなく、さも当然の様に答えるトレイにケイトは驚く。
「ぇ…マジ?トレイ君と監督生ちゃんってそんな仲?」
昨日の談話室での会話を思い出す。
「そんな仲ってどんな仲だよ。」
「名前で呼び合う仲ってこと!」
思わず声に焦りが含んでしまう。
「どうなんだろうな。多分、『お前』呼びが嫌だったんじゃないか。」
「いやいや…トレイ君って案外鈍感?」
「ハハ…どうだろうな。」
「じゃあじゃあ、カレカノとかではないカンジ?」
動揺する気持ちを抑え、普段通りに聞こえるよう取り繕う。