第2章 ◆化粧/ケイト
夕食が終わると自室に籠もる生徒が多い。その為、談話室にいる人もまばらになる。
入浴後、自室に向かっていたケイトは談話室の奥に他の寮生に比べ接点が多い二人組の姿を見つけた。トラブルに巻き込まれるのはごめんだが、何か面白いことがありそうだと思い少し離れた位置のソファに腰を下ろし聞き耳をたてる。
「たまたま見てしまったんだ…。」
深刻な顔をしたデュースは思い詰めた様子で口を開く。
「何を?」
少し気怠げにエースが尋ねる。
「監督生が告白されているところを…。」
デュースの答えに聞き耳を立てていたケイトは、思わず飲む寸前のお茶を零しそうになる。そんな様子を二人は気付いた様子もなく話を続ける。
「…監督生ってあの?」
「あぁ。」
「マジ?」
「マジだ。」
「見間違いとかじゃなくて?」
「あれは確かに監督生だった。」
監督生とは二人のクラスメイトでもあり友人でもあるユウのことだろう。
この学園唯一の女子生徒。イレギュラーな存在。
入学当初は男装の話もあったそうだが、獣人族等の嗅覚が鋭い生徒もいる学園では匂いでバレるとのことでその話は無くなった。また、本人も『私より圧倒的に顔もスタイルも良い人が多いから大丈夫。』と謎の自信から隠そうとする様子も無かった。
「まぁ、よく見れば可愛いもんなぁ。モテるよな。…オレ告っときゃ良かったかなー。」
本気ともジョークとも取れる言葉は聞き流す。エースにあの監督生が靡くはずがない。流れてきたマジカメの投稿にイイねを押す。
「エースは監督生のこと好きなのか?」
「んー、好きっていうか監督生ならイケる気がする。」
「監督生が知ったら怒るだろうな。」
ー『イイね』
「……そっか、監督生は彼氏持ちになるのか…。あぁ!オレも彼女欲しい!」
談話室に響き渡る声で叫ぶエースに寮生が注意する。
「いや、好きな人がいるからって断ってた。」
「好きな人?誰それ?」
「そこまでは知らない。」
「まさかのオレとか?」
ーそれはないっしょ。
思わず否定する。
「無いな。」
デュースも即答する。
「えー!何でだよ。オレ毎日一緒にいるし、良いセン行ってると思うんだけど?!」
「それを言ったら僕だって同じだ!」
「いやいや、もっとないでしょ。…んー、クルーウェル先生とか?『顔が良い』って言ってた。」
有り得そうな人物ではあるが、ちょっと違う気もする。