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【イケメン戦国】忘却草ノ恋心【豊臣秀吉】

第2章 逢瀬


「姫様…本当にお一人で大丈夫なのですか?」

「大丈夫。それに秀吉様が迎えに来られるし」

「そういう事じゃありません」


とある晴天が広がる日の事、朱里は心配そうに聞いていくる綾を宥めるかのように話す。
何せ今日は秀吉と安土の城下でお茶をする日。

手紙を出した後、直ぐに秀吉からは返答が来てこの日に会おうとなった。
綾からは『逢瀬ではありませんか』と言われたが違う。


「恋人でもない男女が2人っきりなんて…不純です」

「邪な気持ちは無いから不純では無いと思うけど…逢瀬ではないし」

「逢瀬です。男女2人っきりの茶屋なんて逢瀬そのものです!」


頑なにそう言う綾に、朱里は苦笑いを浮かべる。
どうも彼女は秀吉が嫌いな様で、今日会うことだって『行かない方が良いのでは』と渋っていた。

大切にされている…そう分かっているので朱里も怒るに怒れない。
とても愛おしい姉の様な存在の人だから。


「お土産買って来るから」

「お土産で宥め様としないでくださいっ!」


そう言いながら二人は部屋から城の門へと移動する。
秀吉が指定した時間にそろそろなりそうで、綾は本当は行って欲しくない気持ちと格闘。


「もし、危ないと思ったら護身用の小刀もあるし」

「……逞しいです。お気を付けてくださいよ?」

「ありがとう、綾」


すると二人の前から女性達が歩いてくる列が見えた。
その姿を見ると朱里から笑顔は消えて、口を閉ざしてから綾と共に端に寄る。

列の先頭の女性は二人の姿を見ると足を止めた。
長い黒髪に鋭い目つきの女性は朱里の母であり、佐野の妻である由良。


「あら…何処かに出かけるのかしら」


由良はそう朱里に聞きながら、目線は綾の元へと向ける。
そして直ぐに綾は頭を下げながら口を開いた。


「姫様はこれから、豊臣秀吉殿と安土の城下に」

「豊臣秀吉……。あぁ、信長様の右腕の農家生まれの卑しい平民ね。そんな男と城下に?」

「はい。秀吉様に前からお誘いがあったので」

「そう……朱里、貴方は自分の立場を分かっているわね?」


威圧感を出しながら由良は朱里へとそう聞く。
その目は娘に向ける様な物ではなく、まるで下等な生き物を見るような目。
そして朱里は頭を下げたまま頷いた。
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