第9章 ep.08 不思議な気分
ヴィンス
「リディア…!」
男が出て行くのを見たヴィンスは慌ててリディアへ近付き手の拘束と目隠しを解いてやると、崩れるように椅子から落ちる彼女の身体をヴィンスは受け止める。
傷口は塞がっているのに血を流しすぎたせいで彼女の息は荒く
半ば叫ぶようにヴィンスは腕の中にいるリディア声を掛ける
ヴィンス
「俺の血を飲め!」
リディア
「嫌、だ…」
ヴィンス
「良いから!頼むから…飲んでくれ!」
リディア
「私が死んだら…もう、迷惑…かけなくて済む」
ヴィンス
(あぁ、くそ…っ…こんな時に自覚するなんて)
吸血鬼は首と心臓を攻撃されない限り死なない。
だが、一定時間…血が足りないにも関わらず全く摂取しないと死んでしまう。
大体そういう時は人、一人分の血液が必要だがリディアの場合は一口でも摂取すれば何とかなる…と同時に他の吸血鬼と違い時間が短い
そして、彼女が死にそうになった今…ヴィンスはいつからかなんて分からない自分の好意を自覚し、彼の頼りない声が響く
ヴィンス
「迷惑じゃないから…生きてくれ」
リディア
「でも、無理だよ…」
ヴィンス
「死なない約束、しただろ?君の命は俺の物なんだよ…だから、勝手に…死なないでくれ」
縋るように普段よりも色が白いリディアをヴィンスは抱き締める
─ダァンッ
倉庫の扉が大きな音をたてて開くとそこにはフリント、ノム、ミフウが立っていた。
フリント
「リディア!」
血だらけでヴィンスの腕の中でぐったりとするリディアを見てフリントが慌てて腕の布を外しながら駆け寄る
フリント
「リディア…!」
リディア
「フリント…、…っ」
フリントは無理矢理、リディアの口を開けさせて自分の腕に牙を刺す。
それを見ていたヴィンスは安堵しつつもどこか悔しそうにする
ヴィンス
「ごめん……助かったよ」
フリント
「慣れてるんだ。…吸血衝動きて拒む時いつも俺がこうしてる。お前のせいじゃない…俺等も来るの遅くなっちまって、悪かったな」
ヴィンス
「いや、ありがとう。……ところで、どうして此処が?」
力なく告げるも気になった事をヴィンスは問う