第9章 ep.08 不思議な気分
未だ男の目的が分からないヴィンスは手を出せずに見ている事しか出来ない。
ヴィンス
「体調が悪いふりして、彼女を捕まえて何が目的なんだ?」
男
「用があるのはこいつじゃなくて、お前だよ」
ヴィンス
「だったら、俺だけ捕まえれば良かっただろ」
男
「それじゃあ…駄目なんだよな。俺の顔に見覚えはないか?」
その男が被っていたフードを外すとヴィンスは驚いて目を丸くする
ヴィンス
「船の…操縦士」
男
「そう、正解。…こいつお前の弱点だろ?」
ヴィンス
「……?」
理解できない、と表情には貼り付けると男は馬鹿にしたように笑う。
男はヴィンスがあの日、リディアを抱き締めたのを見ていてそう判断したのだ
男
「まぁ…何でも良いんだけどさぁ。お前が何をしたか…覚えてるか?」
ヴィンス
「………」
男
「覚えてるわけ無いよなぁ?お前が思い出さない限り…俺はお前に痛みを与える。間接的に…な?」
リディア
「あぁ…っ!」
ヴィンス
「リディア…!」
目隠しをして状況がいまいち理解できていないリディアの肩を男が持っていたナイフで刺した。
突然の痛みにリディアは声を吐き出す。
ヴィンス
(リディアを連れてきたのは吸血鬼だからか…吸血鬼は死なないし、人間にやるのは流石に無理だし他人であれば俺が必死にならない。…だから、吸血鬼で俺の身近にいるリディアが丁度良かったのか)
リディアを狙ったのが意図的である事を理解したヴィンスは奥歯を噛み締めた
男
「へぇ…吸血鬼って本当にすぐに傷が治るんだな」
ヴィンス
「やめろ!彼女には関係ないだろ」
男
「関係ないけどお前はこっちの方が苦しいんじゃないか?…あんたには悪いけど手伝ってもらうよ。まぁ、大丈夫だよな?あんたは吸血鬼なんだし」
リディアの耳元で話す男のナイフを持った手が今度は彼女の腹部を貫く。
思わず身体が動き助けに来ようとするヴィンスを止めるように、腹部から引き抜いた彼女の血で濡れたナイフを向けられヴィンスは止まる