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苦しみの [   ]

第9章 ep.08 不思議な気分




リディア
「……?」

ヴィンス
「どうかしたかい?」

リディア
「今後ろで音……ぁ!」


ベンチの背後にある路地裏へと目を凝らしたリディアが慌てたように立ち上り、入っていくのを見てヴィンスも慌てて立ち上がる


リディア
「大丈夫ですか…!」


リディアは路地裏で蹲る男性を見付けて近付く。
背中を擦ろうと手を伸ばした瞬間に、手元にはキラリと光るものがありリディアは固まる


男性
「…あんたと一緒にいた男を殺されたくなかったら、俺に従え」


耳元で囁かれる言葉に色気なんてものはなく、何よりヴィンスを殺されたくなかったらというそれにリディアは動けなくなってしまう


ヴィンス
「リディア、どうし……っ」


遅れてやってきたヴィンスは立ち上がったリディアの首元に当てられているナイフを見て息を呑む



「こいつを傷付けられたくなかったら、ついてこい。変な事をしたら…分かってるよな?」

ヴィンス
「………分かった」


リディアは抵抗すれば簡単に逃げられるが、そうした所でヴィンスに何が起こるか分からないため従うしかなかった


そのまま倉庫のような所へ連れていかれ、男はリディアを椅子に座らせ背凭れの向こうで手を拘束した。


ヴィンス
(ん?…リディアのマフラー…)


目の前に立っているヴィンスは彼女の変化に不思議そうにしたが、リディアの白い首筋に再びナイフが当てられればそんな事を考えている場合ではないと男へ視線を向ける



「流石に見られながらって言うのはさ、気が引けるんだよね」


そう呟いた男は一度、リディアの首筋からナイフを外して彼女の視界を奪うように布を巻き付け目隠しをする。


ヴィンス
「…気が引ける…って言うのは?」


「俺知ってるんだ。この女が吸血鬼だって」

ヴィンス
「は…?」


「男と戦ってる時、目が赤かったもんな?」

リディア
「………っ」


リディアは見られていた事に驚きつつも自分が吸血鬼だと分かっていて意図的に連れて来られたのだと理解した



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