第9章 ep.08 不思議な気分
リディア
「わぁ…凄い」
運ばれてきたチョコレートケーキは綺麗に飾られ、それを見たリディアは目を輝かせた
ヴィンス
(可愛いな…)
無意識に胸中で呟いた言葉にヴィンスは驚いて思わず、声に出てもいないのに口を押さえてしまう
リディア
「ん?どうかしたの?」
ヴィンス
「え?いや、何でもない何でも。…さ、食べてごらん」
リディア
「うん、いただきます」
不思議そうにしていたリディアだったが、ヴィンスに促されると頷いてフォークをケーキに差し込み、それを咥内へ収める
リディア
「んっ…美味しい」
甘過ぎずほろ苦さのあるチョコレートケーキにリディアは頬を緩める
それをヴィンスはコーヒーを飲みながら見詰める
リディア
「ヴィンスは食べないの?」
ヴィンス
「ん、嗚呼。俺、甘いものあまり得意じゃないんだ。けど、前に此処のチョコレートケーキを食べたら凄く美味しくてね」
リディア
「それなら食べれば良かったのに…私だけ申し訳ないよ」
眉を下げて告げるリディアを見るとヴィンスは少し考えるようにしてから、彼女へ視線を向ける
ヴィンス
「じゃあ、リディアのやつを俺に一口頂戴?」
リディア
「それは構わないけど…一口で良いの?」
ヴィンス
「良いよ」
頷くヴィンスを見てリディアはケーキの乗った皿を彼の方へ移動させようとしたが、それをヴィンスは止める。
止められたリディアは不思議そうに首を傾げた
ヴィンス
「君が、俺に食べさせてよ」
リディア
「えぇ?」
ヴィンス
「ね?」
リディア
「うっ……分かった」
押し負けたリディアは頷き、フォークに一口分を乗せてヴィンスの口元へ運ぶ。
それをヴィンスは、ぱくりと食べる
ヴィンス
「うん、やっぱり美味しい」
リディア
(恥ずかしい…)
熱くなる顔を隠すようにリディアはカフェオレに口をつける