第9章 ep.08 不思議な気分
それに気付いたフリントが読んでいた本から顔を上げ
フリント
「どっか行くのか」
リディア
「うん、ヴィンスとちょっと外に」
フリント
「そうか。気を付けて行ってこいよ」
リディア
「ありがと、フリント」
フリントに笑みを向けてから部屋を出ると、ヴィンスがいる研究部屋に向かい扉をノックする
ヴィンス
「や、お待たせ。それじゃ行こうか」
にこやかに扉の向こうから現れた洋服が黒で統一されたヴィンスを見上げてリディアは頷く。
拠点がある暗い地下から明るい外へ出ると、リディアは目の前の乗り物にヴィンスを見る
ヴィンス
「馬車には乗った事あるかい?」
リディア
「ない…だってこれ」
ヴィンス
「貴族じゃない人だって乗ってる。だから、一緒に乗ろう」
微笑みながら差し出されるヴィンスの手にリディアは少し迷ってから、手を重ね。
エスコートするように馬車に二人が乗り込むと馬車は走り出す
リディア
「何だか…緊張する」
ヴィンス
「緊張する必要なんかないさ。…リディア、馬は乗れるのかい?」
リディア
「え?うん、乗れるよ」
ヴィンス
「そうか。それなら今度、皆で馬に乗って遠出でもしようか」
予想していなかった提案にリディアはきょとんとしたが、次には嬉しそうに笑んでいた
リディア
「楽しそう」
ヴィンス
「だろ?」
リディア
「うんっ」
暫く馬車に揺られると一つの店の前で止まった。
外へ出るとその見せは絵本の中に出てきそうな佇まいをしていて、リディアは表情を綻ばせる
ヴィンス
「さ、入ろ」
促される様にしてリディアが店内へ脚を踏み入れると、可愛らしい小物で飾られている。
その空間のお陰で、あまり二人きりになった事がないヴィンスとの外出で緊張していたリディアは思わず笑顔になる
丸い木製のテーブルを挟んで腰掛けるとヴィンスがリディアへと笑みを向け
ヴィンス
「ケーキは好きかい?」
リディア
「うん、あまり食べた事ないけど甘くて好き」
ヴィンス
「それは良かった。此処のケーキ美味しいから君に食べさせたかったんだ」
そう告げられると嬉しくなりリディアはヴィンスへお礼を述べる