第9章 ep.08 不思議な気分
【No side】
戸惑った後にリディアはヴィンスの誘いに乗る事にした。
そうして、二人で拠点まで歩き出すと目の前の闇色に変わった道から大きな人影が走ってきて思わず二人は立ち止まる
フリント
「悪い、遅く…って、おい。お前居たのかよ、迎えに行ったなら伝えろよ」
ヴィンス
「いやぁ、悪いね」
大きな人影はリディアを迎えに来たフリントだった。
リディア
「フリントに言わずに来たの?」
ヴィンス
「うん。だって、楽しくお喋りしてたから」
フリント
「どこが楽しそうだ。面倒臭そうって言え」
ヴィンス
「えー」
会話をする二人を見てリディアは小さく笑うも、寒さに身体を震わせ歩き出して二人を振り返る
リディア
「ね、早く帰ろーよ。寒い!」
ヴィンス
「嗚呼、そうだね」
先を歩いていたリディアを挟むように二人が並ぶ
フリント
「昔みてぇにおんぶしてやろうか」
リディア
「あ、懐かしい!」
ヴィンス
「おんぶ?」
リディア
「そう。私が寒がりだから。フリントって凄い暖かいんだよ」
思い出してはしゃぐリディアは、フリントの背後に回り少しだけ助走をつけて彼の背中に飛び乗る
フリント
「うおっ…言えよ。言ったらしゃがんでやったのに」
驚きながらもふらつく事もなく背中に飛び乗ってきたリディアをしっかりと受け止めて笑う。
そんな二人を見たヴィンスは、仲が良いなと思うのと同時にまたもやっとしたものが現れて嫌そうな顔をする
三人で会話をしながら夜道を進み拠点へと帰っていった─…
──翌朝
リディア
「ありがと、フリント」
専用の吸血衝動抑制薬を衝動の予兆があると飲んでいるため朝晩の吸血が殆ど無くなっていた。
だが、あくまで主食は血で人間の食べ物では満たされるわけがないため今日は久し振りにフリントから血をもらったのだ。
お礼を述べるとフリントは大きく笑って頷いた
それからリディアは脚首までを覆う淡いピンクのワンピースを纏い黒の外套ではなく、深い赤のコートを羽織り首に白のマフラーをする