第1章 ep.00 また最初から
十字架やニンニクが苦手なんていうのは昔の書物での話。
…ただ、花や香水の匂いは微量なら平気だけど出来れば嗅ぎたくない。
だから、仲良くなった村の人達には花を飾るように伝えている。
親切にしてくれた人を襲わない為に
木に手をつきながら森を進んでいく。
段々と意識が誰かに移り変わるような感覚に私は焦る。
必死に薄くなってくる理性を私は手放したくなくて抗う
リディア
「う……ぁ…っ」
フリント
「リディア…!」
触れたら簡単に崩れてしまいそうな理性を保つ中で聞こえてきたフリントの声と、同時に後ろから口元に回される太い腕の内側。
やはり、簡単に崩れてしまった私の理性
最後に残るのは私がフリントの薄い皮膚を牙で破る感触だった─…
【No side】
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「見て」
?2
「ん?…っ、あの吸血鬼…!」
森を歩いていた一人の男性が、もう一人の男性と女性に声を掛ける。
彼等の目の前に広がる吸血鬼がたった今、食事をしている光景に軽くつり上がった大きい目を更につり上がらせた男が、その吸血鬼を……リディアを殺しに行こうとする
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「待って、ノム」
が、ノムと呼ばれた彼の行動はこの中で年長者と思われる男によって止められる。
当然、納得のいかないノムはその男へ嫌悪感を露にして言葉を投げた
2=ノム
「は?何で。あの人死んじまうぞ、ヴィンス!」
1=ヴィンス
「良いから。良く見るんだ」
ノムを止めた緑っぽい金の髪を持つヴィンスという男は、更にノムを制止して吸血鬼を良く見るように告げた
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「……っ…あの吸血鬼」
ノム
「…泣いてん、のか…?」
前髪と後ろ髪が顎の長さで揃った髪の女が、ヴィンスの言葉に従って吸血鬼の初めて見る様子に少し細い眠た気な目を丸くした。
ヴィンス
「ミフウ、彼女に集中してみて」
3=ミフウ
「え?うん…」
ヴィンスの言葉に不思議そうな表情をしながらも頷き、フリントの腕に牙をたてて涙を流し吸血しているリディアをじっと見て集中すると─