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苦しみの [   ]

第1章 ep.00 また最初から




【リディア side】



翌日から村へ出る。
フードを目深に被っていると不思議がられるから日の光は苦手だけど、今日は外套は羽織ってない


村人
「お、見ねぇ顔だな。村長が言ってた新入りってあんたの事か」


果物屋を覗くとそこの主が大きく笑って私に問い掛けてくる。
勿論、目を合わせても今は目薬をさして紫色の瞳になっているからバレない


リディア
「うん、そう。これから宜しくお願いします」

村人
「こちらこそな。美人さんにはただでこれをやろう」


悪戯っ子の様な笑みを浮かべて渡されたのは綺麗な林檎を二つ。
私は嬉しくなっておじさんにお礼を言ってから、林檎を受け取る


それから村を少し散策して新しい家に帰った。








まずい…。
フリントが用心棒へ出て数日が経った頃、棚に並ぶ空になった瓶と血が収まっている瓶を見て私は焦っていた。
今回は普段よりも期間が長い任務になってしまったのだろうと残り少ない瓶を見て思う

彼だって沢山の量は置いていけない。
小瓶が無くなるまでにフリントが帰ってこないと襲ってくるのが吸血衝動─…


ただ、人間を殺してまで吸血したいとは思わない。
出来る事ならば吸血せずにいたい…。
だけど、我慢すればする程に空腹と喉の渇きを実感する


吸血衝動がくる度に私は思う



リディア
「…っ…死にたい」



我慢して我慢して…死ねたら楽なのに、気が付いたらいつも空腹も喉の渇きも治まっていて脚元には私が殺してしまったであろう人間が居る

こんな事をしてしまう自分が嫌で私は死にたいのに、誰も私を殺す事が出来ない。
フリントは絶対にしてくれない…寧ろ、生きろと怒ってくる


でも、昔から自分じゃ死ねない臆病者…。
フリントが襲わなくて良い様に朝と夜に血をくれるのだって、小瓶に置いていってくれるのだって本当は申し訳ないし苦しい


リディア
「うっ……はぁ…っ」


私は扉を開けて外に出た。
吸血するためではなく吸血しないため…。
この数日で仲良くなった家の前を通ると教えた通り花が飾ってあり、私はその匂いに口を押さえて森へと歩む



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