第1章 ep.00 また最初から
リディア
(…助けて。ごめんなさい…ごめんなさい…助けて……誰か私を殺して)
ヴィンス
「何て思っているか…分かった?」
ミフウ
「助けて、ごめんなさいって」
ノム
「は…?」
ミフウ
「それと…私を殺してって、思ってる」
ノム
「……っ…望み通りに、してやろうぜ」
聞こえたままを告げるミフウの言葉にノムは驚いたもののすぐに瞳に殺意を宿してリディアの元へ向かおうとするのをヴィンスの声が止める
ヴィンス
「駄目だ。…彼女は連れて帰る」
【リディア side】
筋肉に力を込められると吸血が出来なくなり、理性を取り戻し咥内に広がる血の味と空腹と喉の渇きが治まっていて…私はまた、どうにも出来ない吸血衝動の末にフリントに迷惑をかけていた
リディア
「フリント…ごめっ…ごめんなさい…っ」
フリント
「大丈夫。大丈夫だから…俺がした事だ。お前のせいじゃない」
号泣する私をフリントは暖かい腕で抱き締め背中を撫でながら優しく慰めてくれる
フリント
「それに、お前は誰も襲わなかった。偉かったな」
リディア
「ごめん…っ…ごめんね」
子供の様に泣きじゃくる私を落ち着かせるようにフリントはしっかりと抱き締めてくれる
【No side】
リディアが泣き止んだ頃、木の枝を踏む音が響きフリントは辺りへ視線を向ける。
感じる人の気配にフリントは腕の中にいるリディアを守るように抱き締める力を僅かに強める
フリント
「誰だ」
尖った声でフリントが声を上げると近付いてきた三人の内ヴィンスだけが、切れ長で少し大きい目を細くして笑んでいた
ヴィンス
「そんなに殺気立てないでよ、襲うつもりないから」
フリント
「じゃあ、何の用だ」
ヴィンス
「うん、君の腕の中にいる…その吸血鬼に用があってね」
ヴィンスの緑の瞳がリディアを捕らえていた。
そして、吸血している所を見られ…自分に用があるなんて言われて身体を強張らせ思わずフリントの服をぎゅうっと握っていた
ヴィンス
「君を…保護したいんだ」
リディア
「……保護?」
ヴィンス
「嗚呼、悪くない話だろう?」
彼の提案に戸惑いながらもリディアはフリントを見上げる