第1章 ep.00 また最初から
目が覚めてから歩き出して見付けた村に入り、村長に挨拶をするとすぐに家を紹介してくれた。
持っていた少ない荷物を新居の机に置くと、フリントが思い出したように外套を脱いでいる最中のリディアに視線を向け
フリント
「そういや、俺が盗ってきた瞳の色を変える薬は持ってきたのか?」
リディア
「うん。あれがないと困るから、ちゃんと持ってきた」
そう言って小さな鞄から取り出した薬をフリントへ見せる。
瞳の色を変える薬というのは前にフリントが、吸血鬼に襲われた時に返り討ちにして盗んだ物。
吸血鬼は目が赤い為、すぐにバレてしまうので人に紛れて暮らすのに必要な薬だ
だから、フリントと出会ってからのリディアはバレる確率が圧倒的に減った
夜までまったりしてからフリントが注射器と小瓶を数本、用意し椅子に座る。
すると、申し訳なさそうにリディアが隣に腰掛ける
リディア
「フリント…いつもごめんね」
フリント
「ったく、毎回謝んなよ。俺が好きでやってんだからよ」
リディア
「でも…」
フリント
「死にたいのに、は聞かねぇからな」
リディア
「…うん、ありがと」
フリントが用意した小瓶には彼の血が収まった。
直接の方が栄養価が高いので、普段は朝と夜に左腕肘下の内側から血を与えているためそこは布で、消えなくなった牙痕を隠している。
だが、用心棒の仕事へ行く事になると家を空ける期間が長いため予めこうして血を置いていくのだ
フリント
「さっさと終わらせて帰ってくるから」
リディア
「うん、気を付けてね」
いつものように仕事へ向かうフリントをリディアは見送る。
リディア
(新しい所に来た初日から仕事なんて、フリント疲れてないかな)
強くいつも助けてくれるフリントの忙しさを心配しながら今日から暮らす事になった家で彼の帰りを待ち、村人にバレないように暮らしていく
全てはまた最初から