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苦しみの [   ]

第7章 ep.06 穴が開いた心




長期的に習いたかったから、心が読めるのがバレて見捨てられるくらいなら最初に言っちまおうって決めてその村に入ったんだ



ミフウ
『あんたが…凄い医者…?』


『凄いかは知らんが、医者だよ』


あたしは驚いたよ。
凄いって言われてる医者は、優しそうな爺さんだった。
本当にこんな人が凄いのかって正直思ったさ


だけど、その爺さん…ルドーは本当に凄かった。
笑顔で患者を安心させて処置は的確…この人に学びたいって思ったよ


ミフウ
『あたしをあんたの元で学ばせてほしいっ』

ルドー
『ほほ、頭上げんか。学べるもんがあるかは分からんが、いくらでも居なさい』

ミフウ
『けど…その前に話しておく事が』

ルドー
『何だい?』

ミフウ
『あたし人の心が読めるんだ。…それを知ってもあんたは此処に置いてくれる?』

ルドー
『関係ないさ。人とは違うものを持っているのは、辛かっただろう。良く頑張ったな』


ルドーの爺さんは誰とも違った。
そんな事、言われた事なくて泣きそうになったよ


その日からあたしはそこで色んな事をやらせてもらった。
自分の事を知ってるのに丁寧に教えてくれるルドー爺さんのお陰で学ぶ事が楽しかった。
全部、吸収して…優秀だな、立派だなって言ってもらえるようになったんだ
自分の腕にも自信がついていた



ラン
『ミフウー!またしくじっちまったよ!』


どんっと音をたてて部屋に入ってきたのは腕を負傷したランだった。
彼女はあたしの事を知ってて仲良くしてくれてる一人で、明るい子さ


ミフウ
『ったく、また庇ったのかい?』

ラン
『おー、身体が勝手に動いちゃうんだよなぁ!』


傷を手当てされながら、がははと豪快に笑うランが此処での恒例になっていた。


その数日後くらいだったかなぁ…慌てて診察室に入ってきた男の言葉で驚いたのは


ルドー
『これ、ミフウ。何をぼさっとしておる!はよ行かんか』


ルドーの強い言葉にあたしは、はっとして慌ててその男と馬を走らせたんだ。

早く、間に合え…そう思いながら。



でも…間に合わなかった。
血だらけになって横たわるランには、あの豪快さがなかった
─…もう手遅れだって、分かっちまう自分が嫌だった



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