第7章 ep.06 穴が開いた心
幼い頃は人の心が集中しなくても聞こえたんだ。
勿論、周りもそうだと思ってたし可笑しな事じゃないと思ってたよ
けど、周りから怖いって言われ始めたんだ。
それを何が怖いのか分からなかったあたしは、両親に話した
母
『ミフウ…話してる声と違うものが聞こえるのは、当たり前の事ではないんだよ』
ミフウ
『え?…母さん達は聞こえないの?』
父
『聞こえない』
ミフウ
『じゃあ、あたしは可笑しいの…?』
父
『可笑しくなんかないさ。…ただ、自分とは違うものを持っている人を怖がったり嫌ったりする人もいる。良いか?向けられなくても良い悪意を向けられては駄目だ。だから、その事は内緒にするんだよ』
自分の中の当たり前はそうじゃなかったと気付いた。
だけど、父からの言葉は幼かったあたしでも何とか理解できた…それを守ろうと思った
けど、気付いてからは勝手に聞こえてくるのが気持ち悪くなって…そっからは、集中しないと聞こえないようにする為に努力した。
で、結果…今みたいに集中しないと聞こえなくなった
15の時、親元を離れて別の村で生活を始めた。
最初は皆、優しかったよ。
村人
『お、お前…人の心が読めるんだってな…!』
村人
『気味がわりぃ!』
化け物を見るような目だった。
本当に同じ奴等かよって思ったくらい怖い顔してたな。
それから、色んな村を転々とするようになったよ
どの村に行っても…どこからバレるのか知らないけど心が読めるって分かると、化け物扱いで…殺してこようとする奴等もいた
あたしが次の村へ向かっている時に蹲ってる男がいた。
そいつは話す事が出来ないくらい苦しんでたから、心を読んだ…したら、体調が悪くて助けてほしかったみたいでね。
男
『ありがとう…助かった…本当にありがとう…!』
その時あたしは感謝する男を見て、見付けたんだ。気味悪がられない職業を。
人を助けたいと思ったのも本当だけど…一番は辛い思いをしてる人は心が読めても有り難がってくれる。
そりゃ勿論、言ってないからだけど…気味悪がられる事はないって気付いたからだ
隣の村に凄い医者がいるって聞いてあたしはそこへ向かった。