第7章 ep.06 穴が開いた心
ミフウ
『ラン…っ』
ラン
『おー、ミフウ…しくじっちまったよ…はは、今回はミフウの手があっても助からないなぁ』
弱々しく笑いながら言葉を吐き出すランは痛々しかった
ラン
『あんたは、最高の医者だよ…私が保証、する…最期にミフウに会えて良かったぁ…私の分まで生きろよ』
呪いにも似た言葉を残して、ランは笑いながら瞼を閉じたんだ。
ミフウ
『くそっ…大事な人を助けられないで…何が、医者だ…っ』
悔しかった。
その日からあたしはあんたみたいになったよ。
医者なのに治療もせずに、毎日ぼーっとして
ルドー
『いつまでそうしておるつもりじゃ』
ミフウ
『え?』
ルドー
『お前さんは夢に見るんじゃろ、ランの事を』
ミフウ
『…っ……何でそれを』
ルドー
『儂も若い頃に経験したからだよ。だがな、ミフウ…本当にそれはお前さんの知ってるランかい?』
ミフウ
『…あたしの知ってる…ラン?』
ルドー
『ランはお前さんが夢で見た事を言うような子だったかの?』
ミフウ
『……それは』
ルドー
『それは…お前さん自身が造り出しておるランじゃろう』
ミフウ
「その言葉からだよ。手の届く距離にいる人は必ず助けようって決めたのは」
その話を聞き終えたリディアは少し考えてから、ミフウへと視線を向け
リディア
「ミフウも苦しんでたんだね」
ミフウ
「…でも、あんた程じゃないよ」
リディア
「そんな事ないよ。私は種が違うから嫌われて当たり前。だけど、同じ人間なのに殺意を向けられるのは凄く辛くて苦しいと思う」
今、明らかに辛いのはリディアであるのにミフウに優しい笑みを向けながら告げるリディアにミフウは苦笑をし
ミフウ
「…あんたは優しいね」
リディア
「気持ちが…分かるから」
ミフウ
「だとしたら、やっぱりあんたも辛いよ。仲良くしてた人がいきなり自分を殺そうとするんだから」
リディア
「似た者同士…かな?」
ミフウ
「そうだね」
リディア
「話してくれてありがと。…ミフウのお陰で姉さんを悪い人にしなくて済んだ。ありがと」
リディアの見せた笑顔は、やっといつも通りの彼女であったためその場にいた全員が安堵の息を溢した