第7章 ep.06 穴が開いた心
ミフウ
「リディア」
リディア
「……ねぇ、ミフウ」
ミフウ
「ん?何だい」
話し掛けると思いのほか早く返事があった事に僅かに驚いたが、彼女の呼び掛けにミフウは隣に腰掛けた
リディア
「…姉さんは…私を恨んでるのかな」
ミフウ
「え?」
思いがけない問いにその場にいた全員が生気のないリディアへ視線を向ける
リディア
「姉さんが灰になってから…同じ夢を見るの」
ミフウ
「どんな夢?」
リディア
「姉さんが助けてって手を伸ばしてるの…だけど、どれだけ手を伸ばしても届かなくて…最後には姉さんが私に置いていくのね…って悲しそうな顔で言うの」
絵に手を伸ばしてから何も掴めない自分の手を見詰めるリディアをミフウは眉を下げて見詰め、小さく息を吐き出した
ミフウ
「本当にそれはあんたの知ってるミィナかい?」
リディア
「え…?」
ミフウ
「ミィナはそんな事を言うような姉だった?」
リディア
「………」
ミフウ
「それは…あんた自身が造り出してる姉だろう」
リディア
「ミフウ…」
いつまで落ち込んでるんだと怒られると思っていたリディアは、彼女から掛けられた言葉に僅かに目を丸くした。
それは気付かせてくれたような気がしてリディアは、絵を見ながら少しだけ口角を上げた
リディア
「ミフウは優しいね…」
ミフウ
「そうかい?」
リディア
「うん。…私たち吸血鬼って恐れられるのと同時に嫌われ者だから…どっちかっていうとノムの反応が正しいのかなって思ってたから。でも、ミフウは最初から優しかったから…少し不思議」
ミフウ
「あたしも、あんたみたいな経験をした事があるから分かるんだ」
リディア
「私みたいな…?」
リディアはやっと絵から隣にいるミフウへと視線を向ける
ミフウ
「あたしがあんたに優しくする理由…と、あたしが医者になった理由もサービスしちゃう。…あたしの昔話、聞いてくれるかい?」
少しふざけた様に告げるミフウを見ながらリディアはしっかりと頷いて、続きを促した