第6章 ep.05 今度は守るよ
少しおかしくなった言い回しに二人は顔を見合わせ肩を揺らして笑った
?
「仲良く家族ごっこか?」
不意に聞こえた少し掠れた低い声に、穏やかだった空気は急速に凍り付いていく。
慌てて立ち上がった二人は、目の前で切れ長でやや垂れている目を細めて笑っている男に視線を向ける。
リディア
(吸血鬼…!)
細められる間から見える瞳が赤い事に気付き、リディアは僅かに驚く。
肩甲骨までの靡く白い髪は綺麗で笑みだって怖いわけではないのに、リディアは息苦しさを覚える
?
「少し時間が掛かりすぎじゃないかぁ?…ミィナよぉ」
ミィナ
「……っ…ヒューリ…」
リディアは混乱した。
白髪の男がミィナと呼んだ事も姉がヒューリと男の名前を呼んだ事も…それは、頼りない声となって溢れる
リディア
「どういう…事?」
ヒューリ
「ミィナはお前を騙して近付いたんだよ」
リディア
「え…?」
ミィナ
「ち、違うのリディア…!」
妹の泣きそうで震える声にミィナは慌ててリディアに訴えるが、愉しげにヒューリは更に目を細め
ヒューリ
「違う?じゃあ、ボスを裏切ったのか」
ミィナ
「………それは」
ヒューリ
「お前はボスに良いように利用されてたんだよ…妹に近付くために、な」
ミィナ
「え…」
真実を告げられたミィナの瞳は揺れた
ヒューリ
「だから、ちゃんとその仕事を全うして…早く捕まえろ」
ミィナはそう指示されるとゆっくりとリディアに向き直り、不安気なリディアを見詰める
リディア
「姉さん…」
だが、次にはリディアを背中に庇いヒューリの方を向いた
ミィナ
「…出来ない」
ヒューリ
「はぁ?」
ミィナ
「出来ない!私は…もうこの子から逃げない!リディアには幸せになってほしいから、今度は私が守るわ…!」
姉の一言にリディアは驚きに瞳を揺らし、愉しげに笑んでいたヒューリからは笑顔が消えた
ヒューリ
「ほぉ…?それなら…………─死ね」