第5章 ep.04 貴女と居たい
リディア
「うん。…もしかしたら今まで目に入ってたのかもしれないけど…心に余裕が無かったから」
ヴィンス
「今はある?」
リディア
「うん。皆のお陰で…自分の事を受け入れてくれる人がいるって心地良いね。ありがと」
視界に光の輝きがリディアの顔を照らし、風に靡く髪を押さえるリディアはとても綺麗でヴィンスは思わず見惚れていた。
リディアが冷たい風に身体を震わせるとヴィンスが小さく笑みを溢し
ヴィンス
「寒いかい?」
リディア
「うん、少し。…でも、船内に入っちゃうの勿体無くて」
彼女の意地らしくも見えるその様子にヴィンスは
ヴィンス
「リディア、此処においで」
リディア
「え?此処?」
ヴィンスの言葉に不思議そうにするも、リディアは特に何も考える事もなく長い脚を広げて座る彼の前に誘われるまま彼女は腰を下ろす。
すると、ヴィンスは小さな身体を包み込むように後ろからリディアを抱き締めた
リディア
「え、ちょっ…」
ヴィンス
「良いから。そんな、ホットコーヒーの暖かさよりこっちの方が断然暖かいだろう?…大人しく暖められなさい」
リディアは突然の行動に心臓が飛び跳ねたが、耳を擽るヴィンスの低くも言い聞かせる様な声音に思わず身を委ねる様にして両手で持っていたホットコーヒーに口をつけた
リディア
「ふふ、もう冷たい」
ヴィンス
「ほら、俺が居て正解だ」
リディア
「長く見すぎたみたい」
ヴィンス
「それだけ喜んでもらえたなら、やった甲斐があるよ」
リディア
「どうして飾り付けようと思ったの?」
ヴィンス
「フリントが言ったんだ。君に見せたいって…フリントは君の心に余裕がなくて視界に入ってなかったのを知ってたんじゃないかな」
リディア
「ふふ…そっか。二人のお陰でこんなに素敵なものが見れた。ありがとね」
顔を軽く振り向かせるリディアにヴィンスは柔らかく笑みを浮かべて答える
──その頃
フリント
「ちっ…良いとこ持ってかれた」
ノム
「………」
小窓から見える二人の姿を見てフリントが悔しそうに呟く隣でノムは静かに目をつり上がらせていた