第5章 ep.04 貴女と居たい
そのあと姉妹は会話を交わしながら人通りの少ない道を歩いて過ごした。
その日の夜、拠点へ帰ると真っ先にヴィンスがいる研究部屋へリディアは向かった。
ヴィンス
「どうかした?」
リディア
「うん。ヴィンスにお願いがあるの」
ヴィンス
「なぁに、どんなお願い?」
リディア
「船に乗せてくれるって言ったでしょ?…それに、姉さんも誘って良いかな?」
断られたらどうしよう、そう思うリディアは不安そうにしながら椅子に座っているヴィンスを見詰める
ヴィンス
「良いよ」
リディア
「本当に…?」
ヴィンス
「嗚呼、本当。だって君の唯一の血縁だろう?」
リディア
「うんっ…ありがと、ヴィンス…!」
ヴィンス
「どういたしまして」
嬉しそうに笑うリディアを見てヴィンスの心は暖かくなったのと同時に、ドドの森でもなった心が踊る感覚に僅かに首を傾げる
ヴィンス
(この感じ…まさかね)
リディア
「ヴィンス?どうかした?」
ぼーっとしていたヴィンスの顔をリディアが覗き込むと彼は珍しく慌てたように身体を跳ねさせて、すぐに笑みで繕う
ヴィンス
「いや、何でもない。…あ、皆には俺から言っておくよ」
リディア
「そう?ありがと、ヴィンス」
承諾してもらえた事が嬉しくてリディアは、足取り軽く研究部屋から出ていった。
──乗船当日の夜
ミィナ
「本当に私が来てしまって良かったのかしら」
フリント
「良いんじゃねぇか」
ミフウ
「そうだよ。あたし等の船長が許可したんだからね」
ミィナは合流するなり心配そうに呟くが、それにフリントとミフウは明るく答えた。
ノムは最初は断ったもののリディアの姉だと聞くと渋々、受け入れたのだった。
ノムはあの日、自分の過去や好きな物を受け入れてくれたリディアに淡い想いを抱き出した事につい最近、気付いてしまった
ノム
(我ながらちょろい…)
そう思いはするが、彼にとって過去や好きな物…吸血鬼の存在はかなり大きいものだ。
それを受け入れた事は大きな心の変化があってもおかしくはない…至極当然な事