第5章 ep.04 貴女と居たい
リディア
(私は…大切な思い出を忘れてたんだ…っ)
吸血鬼にとっては当然の出来事。
幸せでも不幸せでも関係なく…人間にもあるように記憶の薄れはある。
それに、人間よりも膨大な時間を生きるのだから忘れてしまって当たり前なのだ
フリント
「リディア、大丈夫か?」
リディア
「あ、うん…大丈夫。…あの」
ミィナ
「何?」
リディア
「どうして…私の事、覚えてたの?」
ぎこちなくでも気になった事をリディアはミィナに問い掛ける。
すると、彼女は悲し気に笑みを浮かべ
ミィナ
「私が後悔してるから」
リディア
「後悔…?」
ミィナ
「うん。…フリント…だったかしら?」
フリント
「嗚呼」
ミィナ
「この子を、他の吸血鬼とは違うって…思った事はない?」
今のリディアは見た目はただの人間、勿論ミィナも。
にも関わらずフリントがリディアの正体が吸血鬼である事を知っている前提で話されると、フリントは驚きつつも頷いた
ミィナ
「それはね、私達の両親が特別だから」
フリント
「特別?」
ミィナ
「ええ。吸血鬼って年齢が高い程、生命力もあって強く…特別な存在になるの。それで、私達の両親は母が四桁で父が五桁だった」
それを聞いた二人は徐々に目が大きくなる。
年が上がる程に特別なのはリディアも知っていた、だが家族の記憶が愛や温もりしかないリディアは両親の事実に驚いた
フリント
「四桁の奴だって見た事ねぇのに、五桁なんていんのか…」
ミィナ
「ええ。そんな二人から私達は産まれたの。幸せだった、両親は沢山の愛と温もりをくれた」
リディア
「………」
ミィナの言葉を聞いて自分の唯一あった家族の記憶が正しかった事に安堵の息を溢した。
ミィナ
「でもね、どこに行っても特別扱い…苦しくて逃げ出したくなって…私は貴女を連れて逃げたの」
リディア
「逃げたの…?」
ミィナ
「ええ。…二人で生きて行こうって…成長する貴女をちゃんと育てなきゃ、そう思いながら私は暮らしてた。でもね…疲れちゃったの。それで私……貴女を置いて、また…逃げた」
声を震わせながら告げられる話にリディアは何かを思い出した様に眉を下げた