第5章 ep.04 貴女と居たい
フリント
「本当にお前の姉なのか」
リディア
「分か、らない…」
?
「姉だよ。…覚えてない、かな?」
フリント
「…っ…あいつの顔」
フリントの言葉が理解できなくて私は言葉を促す
フリント
「お前が不安そうな顔してる時と同じだ、今のあいつの顔」
リディア
「…え?」
それであの人が私の姉だって判断するの?
だけど…フリントが言うならきっとそうだし、私も何と無く心のどこかで本当の姉だって思ってるから呼んじゃったんだろうし…。
その人は遠慮気味に私達に近付いてきた
?
「今は信じてなくても良いよ。…でも、少しだけ話さない?」
フリント
「行ってこいよ、リディア。俺はその辺で待っててやるから」
腕を離そうとフリントの手が私の手に触れると急に不安が押し寄せてきて、フリントの腕にしがみつくようにしてしまう
リディア
「置い、てかないで…」
フリント
「置いてかねぇよ、近くにいるって」
リディア
「怖いの…っ…一緒にいて」
駄々を捏ねる子供みたいな私に、フリントは凄く優しく微笑んで頷いてくれた
フリント
「なぁ、悪ぃんだけど…俺も一緒で構わないか」
?
「ええ。リディアが落ち着くのなら貴方が居てくれた方が私も安心だもの」
リディア
「………っ」
私…見た事ある、あの人の笑った顔…。
優しくて温かい笑顔…やっぱりあの人
【No side】
小さく静かな店に入った三人の間には沈黙が続いている。
この店は貴族がやって来ない為、香水の匂いがしないからかリディアの表情は穏やかだ。
自分が苦手だからか、姉と名乗る彼女はこういう場所を知っていたようだ
ミィナ
「ミィナ・フォーレスト……この名前は覚えてる?」
沈黙を破ったのはミィナだった。
リディアはその名前を聞くと目を丸くした
リディア
「覚え、てる…」
その名前を聞いただけで、いつの間にか引き出しの奥の方にしまい込んでいた思い出がその名前が出てきただけで断片的にでも甦ってきてリディアは僅かに呼吸を乱す