第5章 ep.04 貴女と居たい
リディアは慌ててぶつかってしまった相手に頭を下げる
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「すまない。…大丈夫だった?」
長身男性は怒る事なく、ミルクティー色の髪を揺らして首を傾げた。
リディア
「あ、はい。私はなんとも…」
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「それは良かった。良ければお詫びにケーキでもどうかな?」
リディア
「え?お詫びなんて…ぶつかったのは私なのに」
お詫び、なんて言われてしまいリディアは紫の瞳を丸くして手を振る。
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「はは、お嬢さんをお茶に誘う口実をくれよ」
慣れたように…でも、嫌味がなくそう告げてくる男性にリディアは思わず固まってしまう
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「もし時間があればどう?お詫びさせてくれるかな」
低く艶のある柔らかい声で問われたリディアは、あまり断るのも良くないと思ったのか誘いに乗る事にした
男性の行動一つ一つはとても優雅で丁寧…身なりを見ても明らかに富裕層であるのが分かる。
それに、リディアが持っていた紙袋をとても自然に奪い持っていた
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「勝手に頼んでしまったけど、良かったかな?」
リディア
「あ、はい。ありがとうございます」
リディアの目の前で両手を組み甲に顎を乗せながら、切れ長で細い目で笑まれれば慌ててお礼を述べた。
あまり入った経験のないカフェや片手で数えるくらいしか食べた事がないクリームに包まれたスポンジの上に赤い苺が乗ったショートケーキに、リディアは緊張していた
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「遠慮せずに食べておくれ」
リディア
「頂きます。……美味しい」
緊張で味なんか分からないんじゃないかと思っていたリディアだったが、甘い味が咥内に広がれば自然と綻ぶ
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「良かった。……成る程、ね」
リディア
「え?」
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「いや、何でもないよ。予定がなくなって困っていたけど…お嬢さんに会えて良かった」
そんな事を言われると思っていなかったリディアは視線を下げて黙々とケーキを食べる。
リディア
「ごちそうさまでした」
挨拶をするリディアを男性は、コーヒーに口をつけながら見て目元だけで笑む