第4章 ep.03 彼と彼女の話
ミフウ
「あんた、もう良いの?」
フリント
「おう、横になったら楽になった」
体力が戻ったと言い張るフリントとミフウは医務室を出て廊下を歩いていた。
リビングの扉を開けると、ノムとヴィンスが二人を見るなり急かすような視線を向ける
ミフウ
「大丈夫だよ。今は眠ってる」
ヴィンス
「そう…良かった」
ノム
「フリントはもう良いのかよ」
フリント
「おう。もう元気だ」
いつも通りに笑って肩を回すフリントは、どかっと椅子に腰掛ける。
それを見て聞こうか悩んでいたのか、ノムが遠慮気味にフリントに問う
ノム
「なぁ…フリント」
フリント
「ん?何だ」
ノム
「あんたはリディアとどうやって出会ったんだ?」
ノムの投げ掛けた問いに他の二人も興味があるのか、フリントへ視線を向ける。
フリント
「出会った……出会ったのは俺がガキの頃だな」
ノム
「そんな前!?」
ミフウ
「聞きたい」
軽く身を乗り出してフリントに聞くミフウの目はきらきらしていた。
フリント
「少し長くなっちまうけど、良いのか」
ヴィンス
「構わないよ。俺も聞きたい」
そう言われたフリントは断らない。
フリント
「俺の家は今の暮らしとは程遠いくらい貧しかった。俺の周りも貧しくて格好も汚い奴等ばっか。…盗みなんて当然だし、バレて暴力を振るわれる事も良くあった。…そんな毎日は他の奴から見たらくそだろうな。けど、俺はそうは思わなかった」
ミフウ
「どうして?」
静かに聞いていたミフウが問い掛けるとフリントは、ふっと小さく笑って
フリント
「優しい両親もいて、弟も妹もいた。…それなりに幸せだって感じるには充分だろ?」