第1章 ep.00 また最初から
その日の夜─…
凄い熱量で轟々と燃える木造の小さな一軒家。
リリィ
「リディアお姉ちゃん…っ…」
リリィの母
「リリィ…!」
燃えていたのはリディアとフリントが暮らす家だった。
気にする事なく炎が燃え盛る家へと向かおうとするリリィを母が慌てて止める
リリィ
「はなっ…離してよ、ママ…!変だよ…皆変だよ!リリィ達はリディアお姉ちゃんに何もされてないのに!」
イアン
「そうだよ!本も沢山…読んでくれたっ…いっぱい、遊んでくれた…!」
アンリ
「怖い人たち、からもっ…沢山、助けてくれたのに…!」
村人たち
「……………」
泣きながら抗議をする子供たちの言葉に大人たちは複雑そうな表情をしたまま、動かない。
子供たちが怒っている理由は、大人たちが二人の家を…用心棒へ出掛けているフリントを除いてリディアが居る時を狙って家へ火をつけたからだ。
フリント
「…………またか」
数日の用心棒先から帰って来たフリントの視界に映る丸焦げの家を見て小さく呟いた。
視線を落とすと、その家だった物の前に座り込んでいるリリィがいてフリントは少女へ近付く。
フリントに気が付くと少女は煤で汚れた顔を彼へと向け
リリィ
「フリントお兄ちゃん…ごめん、なさいっ…皆が家燃やしちゃって…リディアおね…リディアお姉ちゃんがっ…ごめんなさい…いっぱいいっぱい優しくしてくれたのに、ごめんなさいっ」
ぶわっと泣き出しながら謝るリリィの傍に膝をつくと、腰に巻いているつなぎの袖を解いて少女の顔についている煤を拭ってやる
フリント
「リリィ…お前が謝る事じゃない。リディアを守ろうとしてくれてありがとな。……もう、泣くな」
リリィ
「……っ…うん…フリントお兄ちゃんは、どうするの…?」
フリント
「この村を出て行くよ。…ありがとな、リリィ。でっかくなるんだぞ」
にかっと笑いながら不安気な少女の頭を撫でてから立ち上り村を後にして、夜の森へと姿を消す