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苦しみの [   ]

第1章 ep.00 また最初から




店主
「いや、寧ろお礼を言わなくちゃだろ!ありがとな、この村を守ってくれて」

村人
「嗚呼!ありがとう…!」


店主の後に続いて村人は各々、彼等に感謝を述べる。

二人に傷一つ付けられなかった盗賊たちは慌てて帰っていったのだった。
この村にやってくる盗賊は必ずと言って良い程、彼等が今日みたいに追い返している

貧しくてもこの村は皆で支え合い幸せに暮らしていた。
二人が来てからは更に平和という言葉が追加されたのだった




─しかし、村の雰囲気は徐々に悪くなっていく…



用心棒の仕事へ行くフリントを見送ってから、家の扉を閉めようとした時にそれは聞こえてきた


女村人
「リディアがね……」

女村人
「まぁ、本当かい?」


その立ち話に特に反応する事もなく扉を閉める。
それから少しすると扉をノックする音が響き、リディアは扉を開け訪問者であるリリィを招き入れる

リリィは椅子に腰掛けてリディアを見ながら唇を尖らせて言葉を吐く


リリィ
「村の皆がね、変なの。皆ぴりぴりしてて少し怖い」


その言葉を聞くとリディアは少女の隣に椅子を持ってきて腰掛け、優しく小さな手を握る


リディア
「ねぇ、リリィ。良く聞いて」

リリィ
「なぁに?」


真剣な表情のリディアを見上げながら、彼女の優しい手を幼い手が握り返す


リディア
「もう、此処へは来ない方が良い」

リリィ
「え?…どうして?リリィの事…嫌いになっちゃった?」


突然の言葉にリリィの大きな瞳が揺れ、声が震える。
そんな少女にリディアはゆっくりと首を横に振り


リディア
「違うよ。リリィの事が好きだから言ってるの…リリィは良い子だから分かってくれるよね?」

リリィ
「分からなきゃいけないなら…リリィ良い子になりたくない…っ」

リディア
「リリィ…」

リリィ
「ばいばいしたくない…!」


これが別れである事を理解したリリィの瞳に溜まっていた涙が溢れだし、繋いでいた手をリディアの首に回して少女が抱き付く


リディア
「ありがと、リリィ。…でも、今日で最後…良いね?」

リリィ
「……っ……ぅ…わか、った…」


最後にはちゃんと理解をしてくれるリリィの小さな身体を抱き締めながらリディアは心の中で謝った



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