第4章 ep.03 彼と彼女の話
リディア
「けど、ヴィンスに当たっちゃうよ」
ヴィンス
「大丈夫だよ」
リディア
「……分かった」
リディアはヴィンスと乗る事になったが、自分に刺さっている木が当たるのではないかと心配したもののヴィンスはただ笑っていた
ヴィンス
「はい」
リディア
「ありがと」
先に馬に乗ったヴィンスが手を差し出して、リディアを前に乗せる。
彼の胸板が背中に当たらないように気を付けながら大人しくする
ミフウ
「早く戻ろう」
ミフウの声に皆が頷くと馬が闇の中を走り始めた。
ヴィンス
「揺れは大丈夫かい?」
リディア
「ん?うん。もう痛くない…あの手綱、引きながらで出来たらで良いんだけど」
ヴィンス
「何?」
リディア
「細かい木を抜いてもらえない…かな?」
却下されると思っているリディアの声はギリギリ、ヴィンスに届いた
ヴィンス
「分かった。ただ、少し大きめのやつは抜かないからな」
リディア
「ありがと、ヴィンス」
前で嬉し気な声が聞こえるとヴィンスは口角を上げた。
こんな事態にも関わらず頼られた様な、そんな気がして何故か心が踊ったのだ。
─────…
────…
医務室に入るとフリントはベッドに寝かせられた。
ノムとヴィンスは借りた馬を返しに、そのまま走って行った為、此処にはいない
ミフウ
「押すよ?良いね?」
リディア
「うん」
ベッドに腰掛けるリディアに、声を掛けるミフウは彼女から出ている木を掴んでいた。
取り敢えず抜けないギリギリまで中に押し込みうつ伏せに寝かせるようだ
フリント
「リディア」
リディア
「…ありがと、フリント」
不安を顔には出していないがフリントには伝わったらしく、寝転がっている彼がリディアへ手を伸ばすと彼女は素直にその手を掴んだ。
それを確認するとミフウは木を力一杯、押す
リディア
「……っ…ぐ…ぅ…!」
ミフウに心配かけまいとなるべくリディアは声を抑えるがフリントの手が白くなる程、強く握っている。
ミフウ
「良く頑張ったね」
リディア
「はっ…へへ」
ミフウに褒められた気分になったリディアは冷汗を垂らしながら笑みを浮かべた。