第1章 ep.00 また最初から
村人
「は、早く出ていけ!」
酒場に居た一人の男性が痺れを切らした様で怯えながらも声を上げた。
すると、それに便乗して村人は更に声を重ねた
村人
「そうだっ」
村人
「出て行け…!」
盗賊1
「おい、お前ら…誰に向かって口聞いてんだ?あぁ?」
その声に苛立った様に大柄の盗賊が立ち上り先程、声を上げた男性の胸倉を掴もうと腕を伸ばした
が、その太い手は男性の服には届かず白い細腕が阻んだ。
リディア
「貴方たちこそ来るとこ間違えたんじゃない?」
自分よりも遥かに大きな男にも怯む事なく腕を掴んだまま見上げる。
女性に阻まれた事に些か驚いた男だったが、すぐに眉間にシワを刻んだ
盗賊1
「何だぁ?お前」
盗賊2
「ん?良く見たら綺麗な顔してるじゃねーか、一緒に飲まねぇか?」
もう一人の盗賊が彼女の顔を見てニヤニヤと表情を歪めて席へ誘うと、リディアは掴んでいた手を離しにこっと愛らしい笑みを向け
リディア
「貴方たちみたいな人となんてお断り。さっさとこの村から出て行ったら」
盗賊1
「はぁ?調子乗りやがって」
先程、腕を掴まれた男が青筋をたてて彼女へ近寄ると今度はリディアの肩に違う太い腕が回された
フリント
「悪ぃな。俺の同居人は、お前みてぇなくそを見ると何も考えずに本当の事を言っちまうんだよ」
フリントは視線でリディアを指しながら笑って答えた。
だが、その答えが更に気に食わなかったのか周りに居た盗賊たちが立ち上り簡単に囲まれてしまうも二人は平然としている
酒場に居た村人たちは怯えて店の隅へと寄っている
盗賊1
「女のくせに舐めやがって…!」
腕を掴まれた男がリディアに向かって拳を振るうも彼女はその腕を掴み背負い投げの様に飛ばすと木製の机は簡単に壊れた
フリント
「おいおい、そういう女を下に見てる様な言葉使うなよ。モテないぞ?」
盗賊2
「…くそ…!」
軽口を叩きながらもフリントは向かってくる男の腕を捻上げる
─────…
────…
フリント
「悪ぃ、店ん中ぐちゃぐちゃにしちまって」
リディア
「ごめんなさい…」
苦笑しながら後頭部を掻くフリントと眉を垂らして申し訳なさそうに頭を下げるリディアを見て酒場の主は、がははと笑った