第3章 ep.02 他と違う存在
殺そうとした自分に優しく笑みを浮かべて言葉を掛けてくれる…予想していなかった反応にノムは目を丸くする。
ノム
(こんな顔で笑うんだな…こいつ)
また知らなかった彼女の表情。
それは優しく暖かで…高鳴る何かにノムは気付き、慌ててリディアから目を逸らす
ノム
「………」
リディア
「………」
ノム
「……なぁ」
リディア
「ん?」
ノム
「…きたねぇ口でオレの名前を呼ぶな…なんて言っちまって悪かった…。あと、その……酷い事しちまって、悪かった」
気まずそうに告げられるノムの言葉にリディアの目は少しずつ大きくなっていく
リディア
「…………」
ノム
「あんたの事、知ろうともしなかったのに勝手に他の吸血鬼と同じだと決めつけて…本当に悪かった」
リディア
「私はノ、ム…の行動…悪かったなんて思わないよ?だって、吸血鬼に大切な人を奪われた…んでしょ?そしたらその種族が憎くなるよ、知ろうとなんてしない。個なんて見たいとも思わない。…だけど、貴方が私を見てくれて良かった…って思う」
呼ぶなと言われた名前を告げた時、リディアはノムの表情を窺っていたが…彼の表情に嫌悪感などなかった。
リディアの心は昨日ヴィンスに、命を頂戴と言われてから考え…少し生きてみよう、と思えた。
だから、見てくれて良かった…なんて言葉が出たのかもしれない
ノム
「あんたは優しいんだな。本当に…ありがとう」
否定ではなく肯定をしたリディアにノムは初めて笑みを見せながら感謝の言葉を述べた
ノム
「ヴィンスが…オレの家族は吸血鬼に奪われたって言ってただろ」
リディア
「うん…」
ノム
「その通りなんだ。…オレさ貴族育ちで何不自由なく暮らしてたんだけど、窮屈にも思っててよ…ってまぁ、そこはどうでも良いんだけど」
貴族出身である事にリディアは驚いたものの特に口を挟まずに彼が話してくれる、当時の記憶を共に辿る─…