第3章 ep.02 他と違う存在
ノムはあの後、ミフウに片付けを手伝う様に言われて今は彼女の医務室で治療で使った器具を元あった場所に戻している
ミフウ
「なぁ、ノム」
ノム
「んぁ?」
棚の上に手を伸ばしていたノムは、横から聞こえたミフウの方は見ずに返事をした
ミフウ
「本当はあんたも気付いてるんじゃないの?」
ノム
「は?何を」
ミフウ
「あの子は他の吸血鬼と違うって」
突然の問いに棚に物を置き終わるとミフウに視線を向けて不思議そうにしていたが、次いで出された彼女の言葉に目を丸くした
ノム
「…っそんな事…!吸血鬼は皆一緒だ、殺して当然の存在だ!」
ミフウ
「嘘吐き」
早口で告げたノムの言葉をミフウは小さく笑いながら振り払う。
するとノムは悔しそうに顔を歪め
ノム
「……っ、くそ。認めなくなかったのに…あいつを知ろうとする程、理解すんだよ。他の吸血鬼と違うって…あいつは苦しんでるって。受け入れたくねぇ筈なのに…自分の内側の奥は、受け入れる準備が…整っちまってんだよ」
胸の内に溜まっていた物を吐露したノムをミフウは優しく笑いながら見詰めた後、ぽんっと背中を叩いた
ミフウ
「それで良いんじゃないか?受け入れる準備が出来てんなら、後は受け入れるだけなんだからさ…他の吸血鬼を受け入れなくても良い。でも、あんた自身が受け入れたいと思ったあの子だけは恨まなくて良いんじゃないの?」
ノム
「受け入れたいと思った…あいつだけを…?」
ミフウ
「そうさ。全部、嫌いなんて疲れちまうだろ?たまにはこういう事があっても良いじゃない」
楽し気に目を細目ながら、からっと笑うミフウを見てノムは何か腑に落ちたような気がして心が軽くなる
ノム
「そう…だな。ありがとう、ミフウ」
ミフウ
「どういたしまして。…まぁ、あたしにとってもあの子は特別だしね」
ノム
「特別?」
ミフウ
「あたしを見てるみたいでさ」
ノム
「…そういう事な」
小さく苦笑しながらも悲しげに見えるミフウの言葉にノムは理解したように呟いた
その後の医務室には暖かな、でもどこか冷たい空気が流れる中で作業は続けられた