第3章 ep.02 他と違う存在
返事が聞こえて顔を出したのは先程まで苦しんでいたリディアで、笑んでいる姿にどこか安堵する自分に気付きノムはそれを払う様に首を振る。
リディアは意外な人物の訪問に分かりやすく驚く
リディア
「あ、ノ……えっと、どうしたの?」
ノムの名前を溢そうとしてリディアは、彼を追い掛けた際に名を口にする事を止められたのを思い出して言葉を止め、問いを掛けた
ノム
「ヴィンスがフリントを呼んでる」
リディア
「フリントを?─…フリント、ヴィンスが呼んでるって」
彼の用件をパンを食べようとしていたフリントに振り向きリディアが告げると、フリントは面倒臭そうに表情を歪ませる
フリント
「あぁ?俺は今忙しい」
ノム
(こいつもかよ…)
先程聞いた言葉を此処でも聞く事になるとは思わなかったノムは溜め息を溢した
リディア
「忙しいって…パン食べようとしてただけでしょ?ほら、大事な用かもしれないよ。…もお、早く立って」
ノムが突っ込むよりも先にリディアがフリントの前に立って、パンを取り上げ皿に戻す。
彼の両手を掴んで立たせようとするリディアの行動は有り難かった。
フリント
「わーかったよ。行くよ、行く」
降参した様にフリントは立ち上り、ノムに礼を述べてから部屋を出て行く
ノム
「あー…えっと、リディア…その、助かった」
リディア
「ぇ……今…私の名前…」
言いにくそうに言葉を吐き出すノムの唇から溢れた初めて聞く音に、リディアは目を丸くして何度も瞬きをした。
が、それが照れ臭かったのかノムはそっぽを向き
ノム
「な、何だよ…オレだって名前くらい呼ぶ…じ、邪魔したな」
早口にそう告げて彼女の顔も見ずに部屋を後にした。
ミフウ
「たくっ…何だかね」
医務室から出て廊下を歩いていたミフウが、偶々それを目撃し苦笑しながら息と共に言葉を吐き出した。
少しずつでも変化の見られるノムの姿にミフウは少しばかり安心できた