第3章 ep.02 他と違う存在
配給した日から二日が経った頃。
ノム
「はぁ?何でオレが」
ヴィンス
「良いじゃないか、頼むよ」
ノム
「あんたが行きゃ良いだろ。暇そうじゃん」
ヴィンス
「何言ってるんだ、どう見ても忙しそうだろ」
ノム
「それのどこが忙しそうに見えるって?」
両手を広げるヴィンスの手元にはパズルが並んでいて、研究とは言えない作業をしている様にしかノムは見えなかった
ヴィンス
「今ノッてきてるんだ。頼むよ、ノム」
ノム
「ミフウに頼めよ」
ヴィンス
「あー駄目駄目。ミフウは今、診察中」
これ以上は何を言っても無駄だと理解したノムは舌打ちを残して研究部屋を後にした。
ノムがヴィンスに頼まれた通りフリントを呼びに行く為に廊下を歩いていると、二人の部屋から何かが倒れるような音がしてノムは慌てて近付く。
だが、扉を開けて何もなかったら恥をかくだけだと思い少しだけ様子を窺う事にする
ノム
「…ん?」
ノムは扉が少しだけ開いている事に気付き、その隙間から中を覗いて確認するか悩んだが…隙間に目を寄せる
ノム
「………っ」
中では心臓を押えて目と口を大きく開き、呼吸を荒くし床に蹲るリディアの姿があった
リディア
「ぁ……っ」
フリント
「リディア…!」
リディア
「だ、め…っ」
ノムはそれが吸血衝動である事を理解した。
リディアの傍に片膝をついたフリントが、慣れた手付きで左腕に巻いてある布を外し彼女の口元に出すもそれをリディアは拒む
フリント
「ったく、良いから」
リディア
「…んん…!」
だが、それも良くある事の様で拒まれてもフリントは慌てた様子も見せずに自分から彼女の鋭い牙へ皮膚を刺して血液を摂取させる
拒んでいたリディアだったが、血が咥内に入れば嫌な筈なのに求めてしまう自分への嫌悪感から涙を流し苦し気に吸血する
その二人を間近で見たノムは驚きと共に吸血を拒む彼女の姿に他とは違う何かを感じていた
ノム
(…もう良いか)
リディアが落ち着いたのを確認してから、ノムは覗いていた扉を軽くノックした。
リディア
「はーい」