第14章 ep.13 守りたいもの
リディア
「だからってわざと皆を傷付ける必要はなかったでしょ」
モーリス
「私は汝の方から来たという事実がほしかった…手荒な事をしたのは申し訳ないと思っているよ。ただ、私にも汝が必要な事情があるんだ」
リディア
「人類滅亡…前にも言ったけど、私はそんな事望んでな─「本当にそうか?」
リディア
「…え?」
柔らかく少し延びたように話していたモーリスの言葉が急に強く放たれ、リディアは驚きと共に疑問を浮かべる
モーリス
「君も経験しているだろう…親切にしてくれた人間がある日突然、恐ろしい顔で私達を殺そうとしてくる。私も汝と同じで最初は吸血する事に抵抗があったぁ…」
リディア
「…私と…同じ」
色気を纏い延びる声はリディアの耳にも心にもすんなりと落ちてくる
モーリス
「だが、どんなに此方が愛情を持って接しても吸血鬼だと分かれば躊躇いもなく殺そうとしてくる…憎しみの方が勝ったよ…それからは抵抗もなく吸血できるようになったぁ。この世界は私達、吸血鬼には生きづらい…そう思うだろう、リディア」
リディア
「………」
モーリス
「何故、私達が隠れて紛れなきゃいけない…私は吸血鬼が隠れずに暮らせる世界にしたくて人間を殺し、吸血鬼だけの世を作りたいんだ」
リディア
「そんな自分勝手な…」
ヒューリ
「おいおい、嘘だろ?人間だって自分勝手だろ」
ずっと黙っていたヒューリが腕を組んで、リディアを馬鹿にしたようなに笑いながら見る
リディア
「そんなの…私達だって自分勝手じゃない。お腹が空いたら人を殺すんだから」
ヒューリ
「人間も同じ事をしているだろう…生物を食っている」
リディア
「……っ」
モーリス
「話を戻そう」
気が付けばループしてきりがないような言い合いをするリディアとヒューリをモーリスが静かに止める