第13章 ep.12 通じ合った心
ヴィンス
「母さんが灰になった時の親父の悲しそうな顔は今も忘れられない」
リディア
「…辛かった、ね。…自分の大切な人を自分の手でなんて」
ヴィンス
「そう…だね。その頃の俺はまだ可愛かったからね。メンタルへなちょこだったから、相当きつかったよ」
苦笑するヴィンスの手をリディアは思わず握った。
一瞬、驚くもすぐにその手を握り返すヴィンスは優しく微笑んでいた
ノムとミフウは知っていたが、初めて聞かされたフリントは何とも言えないような気分になり前髪を掻きあげた
リディア
「ヴィンス、話してくれてありがと。…それと、吸血鬼を助ける為に凄い薬を作ってくれて本当にありがと。ちゃんと個としての存在を見てくれて、ありがと…皆」
ヴィンス
「リディア…」
ノム
「いや…お礼を言われる様な事をオレはしねぇからな。…リディアの事だって殺そうとしたし」
リディア
「でも、止められたら殺さなかったんでしょ?…此処に診察にくる吸血鬼だって殺せたよ。会わないようにして殺したりはしてなかったって…ミフウから聞いた。だから、ありがと」
ノム
「お、おう…」
視線を逸らしたノムだったが、その表情はとても優しく嬉しそうだった
──その日の夜
リディア
「ね、ヴィンス…ちょっと良い?」
ヴィンスの部屋の扉をノックしてリディアが声を掛けると、ヴィンスは彼女を室内へと招いた
ヴィンス
「どうしたんだい?」
リディア
「あの…あのね、ヴィンス」
ヴィンス
「ん?」
リディア
「私…ヴィンスの事が好き。大好き…それを、伝えたいなって思って。…ふふ、面と向かって言うとやっぱり恥ずかしいね」
銀髪を耳に掛けながら恥ずかしそうに笑うリディアを見て、ヴィンスは優しく笑みを浮かべ
ヴィンス
「俺もリディアの事が大好きだ。…けど、こんな遅くに部屋に来るなんて無用心過ぎないか?」
リディア
「そんな事…ないよ」
ヴィンスを見詰めるリディアは恥ずかしそうにしているのに、視線を逸らさないようにしている