第13章 ep.12 通じ合った心
大変な事は多かったけど、それなりに生活は出来ていたし…まぁ楽しかったよ。
俺が12歳の頃だったかなぁ…親父と家に戻ると母さんの様子がおかしくてね
ヴィンス
『母さん…どうしたの』
母
『……っ…う』
父
『おい、大丈夫か?……っこれ』
ヴィンス
『え?……っ…瞳が…─赤い?』
母
『あ…あぁっ…!』
理由は分からない。
俺の母親は突然変異で吸血鬼になってしまったんだ
母さんは苦しそうに頭を押さえて、机の上にある物や棚にある物を落とすくらいに暴れて…とにかく辛そうだった。
けど、その波のようなものが過ぎると…赤くなった瞳で俺と親父を見たんだ。
それはもう…俺の知ってる母さんじゃなかったよ
凄い勢いで俺と親父に襲い掛かってきた、何とか声を掛けて止めさせようと思うんだけど…突然変異だからか全く自我を失っていてね。
父
『くそ…落ち着けっ』
隙をついて親父が母さんを押さえたんだ。
父
『…っ…ヴィンス…母さんを、楽にしてやろう』
ヴィンス
『え…それって』
父
『母さんを…殺すんだ』
ヴィンス
『そんなっ…何か手があるかもしれない…!』
父
『あって何だ!…俺等にはどうしてやる事も出来ないだろ。…母さんが誰かを殺めてしまう前に俺等で何とかするしかないんだ。…頼むヴィンス…俺は母さんに、そんな事をさせたくない』
悔しそうに告げる親父の声や表情を今でも覚えてるよ。
そうするしかないんだって俺もそれで思ったんだ
父
『ごめんな、ヴィンス…お前にこんな事をさせて』
ヴィンス
『違う。…これは、俺等だから…やらなきゃいけない事だ。父さんだって…辛いでしょ』
その言葉を最後に俺と親父は大きく息を吸い込んで、親父が心臓を俺が首を同時に刺したんだ。
灰になった母さんを見て…その時、俺は思った。
もし突然変異じゃない吸血鬼の中にも苦しんでる人がいるなら助けたいって考えるようになって…研究者を目指して、今に至るってわけ。