第12章 ep.11 潜入と不安材
リディア
「ちゃんと寝るんだよ。退屈だって起き上がったら怒るから!」
フリント
「分かったっつの」
部屋を出る前にリディアはしつこいくらいにフリントに言いながら出ると、ヴィンスとミフウがいて苦笑する
リディア
「ごめんね、おっきい声出して」
ミフウ
「いや、良いよ。…随分と我慢してたんだね」
フリント
「うん、私が頼りないしすぐ気持ちが弱くなっちゃうから…いつも安心させる為に笑ってるんだよね。嬉しいけど、ちょっと寂しいんだ」
ミフウ
「頼りなくはないさ。…けど、今度からは変わるんじゃないかい?ね、ヴィンス……ってありゃ」
ミフウが話をふるのと同時に視線を向けるとヴィンスが何とも言えない表情をしていて、ミフウは苦笑する
ミフウ
(相手は怪我人なんだから…なんつー顔してんだ、この男は)
初めて見るヴィンスの表情をミフウは若干だが楽しんでいると、リディアがミフウの服の裾を引っ張ったためそっちに顔を向ける
リディア
「フリントの事、宜しくね。私じゃ治せないから」
ミフウ
「あたしだって治療くらいしか出来ないよ。…あいつを動かなく出来るのはリディアだけだよ」
リディア
「そう?じゃあ、動きそうになったら呼んで。…じっとしてるのフリント苦手だから」
ミフウ
「嗚呼、分かったよ。…ヴィンス、リディアの事頼むよ」
何をどう頼まれたのか分からなかったがヴィンスが取り敢えずで頷くと、ミフウは笑みを残して医務室へ入った
ヴィンス
「はい」
リディア
「ありがと」
椅子に座るリディアの机の前にヴィンスがコーヒーを置くとお礼を述べて、一口啜る
リディア
「ねぇ、ヴィンス」
ヴィンス
「ん?」
リディア
「ノムとフリントの事だけど」
ヴィンス
「うん、何?」
コーヒーを見詰めながら呟くリディアの言葉を、ヴィンスは急かす事なく見詰める
リディア
「わざと…生かしてるんじゃないかな、って思うの」
ヴィンス
「わざとって何のために?」
リディア
「私達に見せるため」
視線をあげたリディアの瞳は真っ直ぐにヴィンスを捉えた