第12章 ep.11 潜入と不安材
翌日、リディアがノムの様子を見ているとリビングから凄い音がしたためミフウと顔を見合わせて二人は慌ててリビングへ駆け付ける
リディア
「フリント!?」
ヴィンス
「あ、丁度良かったミフウ。フリントが凄い怪我をしてるんだ」
フリント
「これくらい…平気だっつー、の」
凄い音の正体はフリントが倒れたものだった。
リディアがフリントに駆け寄ると、服が真っ赤に染まる程の怪我に表情を歪める
リディア
「何があったの?」
フリント
「訳わかんねぇ奴等に襲われてな。いつもならどうって事ねーのに何かぶつけられた瞬間、身体が重くなってよ…しくじっちまった」
拠点に来てからはもう用心棒をしていないが、その仕事をしていた時でさえ怪我をしても小さい擦り傷だけだったので、こんなに至る所が切れている姿をリディアは見た事がなくて取り乱しそうになる
ミフウ
「早く運ぼう…!」
リディア
「何で痛いのに笑うの」
フリント
「こんなもん痛くねーっつの」
眠るノムの隣に寝かされ、包帯だらけになったフリントが寝転がるベッドサイドに座りながら不満そうにするリディアにまた笑って
フリント
「ばーか、傷は多いが深くねぇからすぐ治るって」
リディア
「そういう事じゃないよ…!」
珍しく目に涙を貯めて声を荒らげるリディアに流石のフリントも驚く。
医務室の外で待機しているヴィンスとミフウも驚いていた
リディア
「フリント、いつも私を安心させようとして笑うじゃん…確かにフリントの笑顔には何度も助けられた。…だけど、でもっ…心配すらするなって言われてるみたいで凄く嫌…わっ」
怒りに任せて声を荒らげるリディアの後頭部へ手が回され引き寄せられると、フリントの首元に顔を埋めさせられていた
フリント
「悪い、そんな風に思わせてたんだな。…心配させたくなかったが、それが良くなかったなんて…今初めて知った」
リディア
「…心配しかできないんだから、心配くらい…したい」
フリント
「嗚呼。ありがとう」
フリントの心地が良い声と温もりに、ちゃんと生きているんだと安心したリディアはやっと落ち着きを取り戻した。