第12章 ep.11 潜入と不安材
リディアは鍵をしっかりとしまうと、懐中時計の針を確認する。
すると、もうすぐ合流時間でリディアは静かにその場を離れた
リディア
「フリント、ミフウ…っ」
ミフウ
「時間丁度だね。…鍵は手に入ったかい?」
死角になる位置でしゃがみながら声を潜めて問われたそれにリディアは先程、託された鍵を見せて答える
フリント
「お、ナイス。…さっさと行こう。ヴィンス達と合流する時間が迫ってる」
フリントの言葉に二人は頷くと、ヴィンスとノムのお陰で廊下に人は歩いていない。
子供がいるらしいしっかりとした扉の前にも監視している人は居なかった為、リディアは鍵で扉を開く
リディア
「この奥かな…?」
開けた中には薄暗い道が続いており、そこを慎重に三人は歩いていく。
リディア
「ん…?」
フリント
「どうかしたか?」
リディア
「…人の気配がする」
フリント
「見張りか」
リディア
「ううん、違う気がする…」
ミフウ
「取り敢えず、気を付けながら進もう」
頷きながら少し歩くともう一つの扉が現れ、それも先程の鍵で開けて中へ入ると
リディア
「いた…!」
広く大きな明るい部屋に綺麗な洋服を着た…というよりも、着せられたような子供達が15人程いた。
子供達はリディア達を見ると驚いたように、様子を窺っている
リディア
「皆、大丈夫?怪我はない?」
リディアがしゃがみ優しく問い掛けると、一人が声をあげる
男の子
「このお姉ちゃん、吸血鬼だ…!」
変装をしていてもリディアが女性である事は簡単にバレたが、吸血鬼であるその事実に安心したのかそこにいた子供の表情は明るくなり、皆がリディア達を信用した
フリント
「リディアが来て正解だったな」
ミフウ
「嗚呼。あたし等だけだったら、人間だって信用されなかったよ」
だが、リディアのお陰もありフリントとミフウの周りにも子供が集まる
フリント
「よし、お前等。…絶対に音をたてずに俺等についてこい。出来るな?」
子供達
「はーいっ」
フリントの声掛けに小声で手をあげながら返事をする子供達に三人は思わず笑みを溢す