第11章 ep.10 一時の休息を
リディア
「あははっ、冷たい」
ミフウ
「当然じゃないか…うわっ」
波打ち際にしゃがんで指先を海に濡らしたリディアは大きく口を開けながら笑い、その後に少しだけ海水を掬うとミフウにかけた。
だが、ミフウは怒る事なく笑う
フリント
「なぁ、見ろよ」
ヴィンス
「ん?……ぁ」
ノム
「…久々にリディアが笑ってんな」
フリント
「な」
昼食の準備をしている男性陣がミフウと波打ち際にしゃがみ、はしゃいでいるリディアを見て安心した様に笑んでいる事を知らない彼女は三人へ振り返り大きく手を振り
リディア
「ねぇー!何か手伝うー?」
フリント
「大丈夫だ!」
ノム
「そこで待ってろよー」
手を振り返すとまたリディアは海へ視線を向けた
ヴィンス
「少しでも彼女の心が休まれば良いな」
フリント
「本当にな」
その言葉を最後に三人はまた作業に戻る。
ミフウ
「楽しい?」
リディア
「うん、楽しい!」
ミフウ
「そう、それは良かった」
そんなゆったりとした楽しい時間はあっという間に過ぎていき空が暗くなると街へと戻ってきた
リディア
「……あの人」
リディアが急に脚を止めて表情が険しくなると、今度は突然走り出して一人の女性を路地裏へと連れていく。
それを見たヴィンス達は驚きながらも後を追い掛ける
リディア
「もう大丈夫」
女性
「ありがとう…っ」
リディア
「あ、皆」
フリント
「どういう事だ?」
リディア
「彼女、吸血鬼の匂いがしててこめかみを押さえてたから、そろそろかと思って」
フリント
「そろそろ?」
女性
「はい。…瞳の色の効果が切れる時間です」
リディア
「色の効果が無くなる時ってこめかみが痛くなるの」
ヴィンス
「成る程」
また新たな事実にヴィンスは興味深そうに頷いた。
その女性吸血鬼の瞳は既に赤くはなかった
彼女へリディアが薬を貸したんだとすぐに理解する。
そして、その女性はお礼を述べてから再び人間に紛れていった