第10章 ep.09 不気味ワルツ
リディア
「貴方…っ」
ゆったりとした足取りで近付いてくる人物へリディアが声を震わせて声を溢す
ミルクティー色の髪を揺らして笑う男はあの日、リディアとぶつかった紳士であった。
だが、笑みは浮かべているのに何か圧されるような空気感に三人の表情は強張る
?
「久し振りだね、お嬢さん」
リディア
「……あの時の」
モーリス
「私の名は…モーリス、覚えておいてリディア」
リディア
「モー、リス」
ミィナ
『あの方には…気を付けて』
リディア
『あの方?…ヒューリ、って…人?』
ミィナ
『違う…あの人より、も…恐ろしい方よ。名前は…モーリス・ヴォガート』
艶のある声で名乗られたそれを、あの日…姉から教えてもらった名前をリディアは思い出して怯えたように息を呑む。
一緒にお茶をした相手が自分を狙っている組織の長である事に驚くよりも先に恐怖が襲った
シディ
「ノム気を付けろ。…あいつがリディアを狙ってるボスだ」
ノム
「…っ…あれが」
三人は何とか自身を奮い立たせ武器を構え、ノムとシディがモーリスに向かっていく。
それに少しだけ遅れてリディアも、彼へ向かうために地面を蹴ろうとするが─…
ノム
「…ぅ…何だこれ…!」
シディ
「リディア、来るな…っ」
モーリスは小さな玉のような物を手にしており、ノムとシディにぶつけると煙があがりそれを吸い込んでしまった二人は急に身体から力が抜けて倒れてしまった
それを見たリディアは慌てて二人の元へと走る
リディア
「二人に何をしたの!?」
しゃがみこんでうつ伏せに倒れる二人を見てから、リディアはモーリスを睨み上げる
モーリス
「眠ってもらっただけだよ。…今日は汝に話があって来たんだ」
リディア
「話…?」
モーリス
「嗚呼。…リディア、私の元へおいで」
少し細い切れ長な目を更に細くさせて笑みを浮かべるモーリスはリディアから視線を外さない