第1章 ep.00 また最初から
フリント
「何で保護しようなんて思う」
ヴィンス
「本音を言うと興味が湧いたから。…俺の所へ来たら吸血衝動に苦しむ事も減ると思ってね」
吸血衝動に苦しむ事が減るという言葉にリディアの表情が変わった。
それを見逃さなかったフリントは彼女へ視線を落とす
フリント
「嘘かも知れねぇんだぞ」
リディア
「…でも、吸血衝動に苦しむ事が減るなら…ついて行ってみたい」
フリント
「ったく…お前はすぐ人を信用し過ぎだっつーの」
リディア
「ごめん…」
フリント
「今更だな。…おい」
二人での会話が終わり、フリントはヴィンスへと視線を向ける
ヴィンス
「話は纏まったかな?」
フリント
「嗚呼。こいつだけじゃなくて俺も連れて行くならその話を受ける」
ヴィンス
「勿論、俺は歓迎するよ。…良いよね?」
緑の瞳を後ろにいる二人に向けると、ミフウは頷いたがノムは不機嫌そうにそっぽを向いた。
だが、彼は自分で聞いたくせに最初から意見を取り入れるつもりがないらしくノムの反応を気にせず二人へ向き直る
ヴィンス
「必要なものがあるだろうから、また明るくなったら此処で会おう。それで良いね」
フリント
「嗚呼」
夜が明けたらまた合流する事になり、その場は一旦解散となった。
こんな夜に出歩く者なんていない。
この世界の人口、約3割はリディアと同じ[吸血鬼]が人に紛れて暮らしている。
だが、夜にしか活動しない吸血鬼の習性を理解している人々は幼い頃からの教えを守って生きている。
そして、大人になったら我が子や孫へその教えを授けるのだ
“夜になったら外を出歩いては駄目”…と。
他の吸血鬼はリディアと違い長く日に当たると灰になってしまう為、夜に働きに出て人に紛れる。
花や香水の匂いが苦手な事は人々は知らない。
だから、リリィ達にした様にリディアはそれを教えて回っている…少しでも犠牲が増えないように、と。
この世界は吸血鬼に怯えながらも、平和に暮らしている…そんな歪な世界の話。