第3章 夏休みのご予定は?
「うん・・・。ごめんな、ちょっと忙しくて。・・・・・・うん・・・」
いつものように屋上で過ごす昼休み。
太陽は相変わらず近い。
コンクリートの壁に背を預けた体勢で足を投げ出していると、ガチャリと重い音がして横のドアが開かれた。
スマホを片手に話しながら目線を上げた私を、入ってきた先生が無言で見下ろす。
ドアを閉めて私の隣に腰を下ろしてこようがお構いなしに、煙草を取り出すその様子を眺めている私はそのまま電話を続けた。
「あー・・・あんま決まった時間は取れないかも。・・・うん、そう。バイト。ジンも夏期講習行くって言ってなかった?」
電話の相手は一つ下の彼氏。
向こうも今の時間は学校にいるから、昼休みに電話が掛かってくることは珍しい。
電話口の向こうからはかすかに男たちの声らしきものが入ってくるから教室にでもいるだろう。
「え・・・?いや、あんま当てになんねえよ私じゃ。塾とか行った方が確実。西高だよな」
目前に迫った夏休み。
高校受験を控えた彼氏に勉強を見てくれと頼まれたことは多々あった。
冗談だろうと思っていたがどうやらそうでもないらしく、人の人生を左右する気のない私は早速無難な道を勧める。