第2章 突然のキス
そしてポンと、閃いた。
導き出された一つの答え。
「そうか、分かった。ヘンタイなんだ」
「失礼だな突然」
頭を悩ませた末に私が自分の中で結論に辿り着き納得すると、横で聞いていた先生は顔を顰めて言った。
先生の何事もなかったかのような態度は拍子抜けするものの、それはきっと私が言えたことではない。
「どうしてくれんですか先生。私これから先キスする事あったら、きっとその度に先生のこと思い出しますよ」
「ほう。悪くねえ」
「いや、悪いんですけど」
教師とキス。
できれば経験したくなかった。
先生はふっと口の端を吊り上げて、ズボンのポケットから煙草の箱を取り出した。
「初めてか?」
「どうでしょう」
「商売女みてえな答えだな」
「あなたこそ失礼です」
火を点けながら満足げな表情を見せる先生。
何がしたかったのかは結局良く分からない。
煙草の煙が空へと細く昇り、私はノートで顔を扇ぎながら先生の指に目を留めた。
煙草を持つその手を、この人の隣で幾度となく見てきた。
骨ばっていて柔らかみの欠片も感じ取れないけれど、長い指は男にしては綺麗に思える。
天気予報によれば来週からはまたも雨が戻って来るらしい。
その雨が明ければ、きっと今度こそは真夏の空がやってくる。