第15章 箱庭に流れる音色
「ここならば脱がない限り誰にも見られることはない。花街での張り込み、潜入重々気を付けるように。あと、今回の任務も前回と同様危険が予想される。油断せず事に当たるんだ」
言葉が進むにつれ強くなる腕に逆らうことなく、更紗は背中を杏寿郎の胸へと預け、その温もりを噛み締める。
「脱ぐことはありえませんので、杏寿郎君と私だけの秘密です。たくさんご心配かと思いますが大丈夫、必ず全て解決させ……この場所へと戻ってまいります。信じてお待ちください」
静かな声音だが力強い言葉に杏寿郎は顔を笑みで満たし、更紗の体を解放して頭をクシャッと撫でた。
「うむ!頼もしくなり俺も嬉しい!さて、ここは俺が片しておくので更紗は準備にかかるといいぞ!宇髄のことだ、きっと早く到着する!」
「杏寿郎君の手を煩わせるわけには……私の髪ですから私が片しますよ!」
そう言って箒を取りに立ち上がったが杏寿郎によりそれを制され、更紗は申し訳ないと言う思いと共に感謝を抱きながら準備を進めることにした。
そして更紗の準備が整った後すぐ天元が到着し、急いで髪を黒く染め杏寿郎に見送られながら、足早に花街へと繰り出して行った。