第15章 箱庭に流れる音色
「にしても姫さん、日本人形みたいだな!なんて言うか、幼くなって花街に連れてくのに罪悪感半端ねぇわ!」
こうして何事もないかのように普通に更紗に話しかけているが、話し掛けられている更紗は首を動かして返事をするのがやっとな状態だ。
さすが元忍。
足の速さは杏寿郎を上回り、加減をして走ってくれてるとはいえ気を緩めればすぐに置いていかれそうになる。
空を飛ぶ神久夜も慣れない速度に、汗を飛び散らせながら必死に羽を動かしている姿は見ているだけで涙が出そう……
「正直、加減してるとはいえ、ここまで姫さんが食らいついてくるとは想像してなかったわ!お陰でもう到着する」
そろそろ日暮れも近くなった今、ずっと移動を続けていた更紗の腹は空腹も近く、もうすぐ到着だと知った少女の顔に喜びと安堵の色が浮かんだ。
そんな更紗の表情の変化を天元が可笑しそうに笑い、足を動かし続ける自分より遥かに小さな体の前に腕をかざして、止まるように促す。
「どう、されましたか?ふぅ……」
「お疲れさん!すぐそこの藤の花の家紋の家で最終準備をして、飯貰って花街に入るぞ!姫さん、心の準備はいいな?」
「もちろんです!精一杯尽力致しますので、よろしくお願いします!」
これから僅かな時間の後、やる気に満ちた更紗と天元は花街へと身を滑り込ませていくこととなる。