第15章 箱庭に流れる音色
そうして斬髪式会場である更紗の自室へ場所を移し、杏寿郎は片手に更紗の髪を、もう片方の震える手に鋏を持って冷や汗を流していた。
「大丈夫です、髪はすぐに伸ばせます。2日後には元通りの長さに戻す予定ですので」
「うむ……それでも女子の髪を切るというのは罪悪感があってな……可能な限り綺麗に揃える、切るぞ」
「はい、お願い致します」
その返事を合図に杏寿郎の手によって髪が切り落とされていき、やがて肩につく程度の長さまでになった。
以前に更紗自身が日輪刀で無理矢理切り落とした歪な毛先ではなく、杏寿郎の人に対する普段の言動を表すように丁寧に揃えられている。
「床屋のようにはいかんが……終わったぞ。気になるところはないか?」
不安げに杏寿郎は手鏡を持った更紗に確認すると、不安など感じる必要はなく更紗は振り返ってフワリと笑顔を向ける。
「ありがとうございます!綺麗に切り揃えていただけて嬉しいです。似合いますか?」
そう言って少し顔を赤らめる更紗に、杏寿郎は短くなった髪を撫でながら頷いた。
「よく似合っている。普段より少し幼くなったが、とても愛らしい。ほら、後ろについた毛を払ってやるから前を向きなさい」