第15章 箱庭に流れる音色
更紗自身、今まで数多く任務をこなしてきて、張り込みや聞き込みは多くしてきた。
だがそれは十二鬼月でない鬼のものであり、今回はこれまでとは違い難易度は格段に上がるだろう。
柱である天元が数ヶ月、嫁たちと協力しても掴めなかった情報をたった2日で手に入れなければならないのだから。
しかし天元の嫁たちの命が掛かっているので、迷っている暇はない。
更紗はギュッと手を握りしめ、強い眼差しで天元を見据えた。
「任務とあらば完遂させる所存です。ですが完遂させるにあたり気掛かりなことが1つございます」
「気掛かり?何か分かんねぇことでもあんのか?」
そうではないと首を左右に振り、更紗は自身の耳元に垂れる後れ毛を摘んで見せる。
「瞳の色は遠目では目立ちませんが、私の髪色は遠目からでも印象に残りやすいです。後日潜入するならば、張り込みをする日の髪色を変えられませんか?鬼はもちろんですが、奥様たちを見つけ出すためにも、何としても情報を掴みたいのです!」
最近となっては度々見せるようになった更紗の強い意志のこもった表情や言葉に、杏寿郎はもちろん天元の顔にも自然と笑顔が零れた。